ぐずる子どもに手を上げて自己嫌悪…そんなあなたに「たたかない子育て」3つのヒント

四六時中、子どもと向き合っていればストレスを抱え込んでしまうことも…(写真と本文は関係ありません)

 日々の子育てでは、ストレスやいら立ちがつい子どもに向かってしまう場面もあります。特に都市部では、周囲に助けを求められる家族や友人がいないため、しんどさを抱えながら子育てしている家庭も多くあると指摘されています。東京都内で2児を育てる専業主婦の女性(37)の話を例に、各地で「たたかない子育て」講座を開き、さまざまな親子に向き合っている高祖常子(こうそ・ときこ)さんに、子育てが楽になるヒントを聞きました。

夫は毎朝7時に出て終電 母子2人きりがつらかった 

 まずはこの主婦の状況です。東京都内のマンションに夫と2歳、4カ月の2人の子どもと4人暮らし。会社員の夫は毎朝7時に家を出て、帰宅は終電。下の子が生まれる半年ほど前までは、「四六時中、母子2人でいることがつらかった」と言います。児童館に出かけたり、友人と会ったりと、とにかく毎日予定を入れ、2人きりにならないようにしていました。

 人と会っている時は気が紛れましたが、家にいると、家事をやらなくてはいけないのに子どもに「遊ぼう」とせがまれたり、用意したご飯を食べてくれなかったりしてストレスが高まります。無視したり、声を荒らげたりすることもありました。

明日は早いのに寝てくれず「いいかげんにして!」

 上の子を2度、たたいたこともあります。1度目は翌朝早く出かける用事があるのに寝てくれなかった時。2時間相手をして、ぐずる子どもに「もういいかげんにして!」と怒鳴り、背中をたたいてしまいました。


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 2度目は、上の子が、生まれたばかりの下の子の頭をたたいているのを見た時です。いずれもたたいた瞬間、「あっ」とわれに返り、自己嫌悪になりました。「できれば、おおらかに、穏やかに子育てしたいのに…」と話しています。

 下の子が生まれるのに合わせ、「これではダメだ」と限界を感じて上の子を認可外の保育施設に預けることにしました。最初は「働いていないのに」「他の人は同じ状況でもおおらかな子育てができているのに」と罪悪感もありましたが、だいぶ楽になったと感じています。

高祖さん、どうしたら「たたかない」「怒鳴らない」子育てができるのでしょうか?

高祖常子さん。子ども虐待防止のシンボルの「オレンジリボン」を胸に付けて取材に答えてくれました

 はい。こうした日中は母子2人きり、夫の帰りは深夜、というような家庭は多いと思います。そんな状況で、乳幼児を育てるのって大変ですよね。親の意に反した行動をする子どもに、ついイラッとすることもあるでしょう。

 さて、日本で虐待で亡くなる子の多くは3歳以下の子です。原因の上位は「泣きやまない」「しつけのため」。実際、虐待で亡くなった子の親が「しつけのつもりだった」というのをニュースなどで見聞きしたことがあると思います。虐待と、たたいたり怒鳴ったりすることはちょっと違うのでは、と思うかもしれませんが、たたくことから、ひどい虐待へとエスカレートしてしまう可能性があります。日本では「たたくのはしょうがない」と容認する人が多いですが、この状況を変えていきたいと思っています。

 そもそも「しつける」というのは、たたいて言うことを聞かせることではないですよね。子ども自身が考えて行動できるように、自立をサポートすること。たたいたり、怒鳴ったりして子どもの行動をコントロールするのは、恐怖や不安で相手を支配することです。怖いからたたかれた瞬間、子どもは言動をやめるけれど、根本的な解決にはつながりません。

 威圧的、支配的な親子関係になってしまうと、子どもが自分の気持ちを出せないようになります。何事にも、子どもは怒られないように、ミスをしないように、こわごわやるようになります。コミュニケーションが取れる親子関係だと、子ども自身も伸び伸び、チャレンジできるようになり、より能力も発揮されるはずです。

 親として具体的にどうすればいいのでしょうか。「子どもと向き合う子育て」のために、私は次の3つを提案します。

 

  • まずは「たたかない、怒鳴らない」と決めましょう。
     感情が爆発しそうな時は、深呼吸して数を数えたり、ちょっとその場を離れたりしてクールダウンします。失敗しても、そこからもう一度「たたかない」と決めましょう。前より「たたく、怒鳴る」子育てが減るように心がけましょう。

  • 落ち着いたら、子どもの気持ちになって受け止め、言葉にして伝えてあげましょう。
     「さっきは、もっと遊びたかったね」などと話しかけると、子ども自身も気持ちが整理できます。子どもは別の人間。尊重する気持ちが大切です。

  • 親自身がストレスをためないように、セルフケアを。
     子どもの言動は同じでも、余裕がない時はイライラします。意識的に好きなことをする時間をつくりましょう。リフレッシュしたり、人に頼めることがあれば、そうしてもいいのです。

 

 講座ではいつも「愛情はシャンパンタワーのように注ぎましょう」と話しています。親の気持ちが満たされていないと、子どもに流れていかないからです。

 夫など家族も巻き込みましょう。ただし、自分とはOKとするラインが違うかもしれません。夫がやってもイライラしない家事を担当してもらうか、やり方を具体的に説明します。任せたことは基本的に相手の裁量でやってもらいましょう。

 余裕をつくるためには「やらない」ことを増やすことも大切です。「子どもが朝、ダラダラして着替えてくれない」というお母さんが、毎朝怒鳴るのをやめようと、夜のうちにパジャマ兼用の服を着せて、朝起きたらそのまま登園させているという話を聞いたこともあります。人によって許せるラインは違うと思うので、皆さんがこの方法で解決するわけではありませんが、「どうしたら怒らずに済むか」という視点で、子どもへの向き合い方を工夫してみることが大切です。ちょっと見方を変えるだけで、楽になることもあるはずですよ。

◇この記事にたくさんの切実なコメントを寄せていただき、ありがとうございます。育児相談に長年たずさわる専門家に、みなさんのコメントを読んでもらい、アドバイスを聞きました。「たたきたくない、二度としたくないと思う自分がいるだけでいいのです」という言葉に、ぜひ耳を傾けてみてください。(東京すくすく編集チーム)

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「たたいてしまった」みなさんのコメントを読んで 育児相談の専門家・帆足暁子さんから気持ちと行動のアドバイス(2019年9月25日)(2019年9月25日)

◇「誰でもいいから話を聞いてほしい」という方のために、電話で話を聞いてもらえる窓口があります。考えがまとまっていなくてもいいそうです。名乗る必要もありません。気持ちを話してみませんか?(東京すくすく編集チーム)

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子どもをたたいてしまう、怒鳴ってしまうなら…「とりあえず電話して」 匿名でOK? どう話せば? 相談員に聞きました(2019年11月29日)


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コメント

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