PTAは「実は戦前組織の”看板の塗り替え”です」 岩竹美加子さんが指摘する悪弊の背景
〈インタビュー編・上〉
「母の会」「大日本連合婦人会」との連続性
-PTAは戦後に広がった組織。教育の民主化の果実ではないのでしょうか。
占領期に連合国軍総司令部(GHQ)が主導した組織だと思っている人が多いですが、それは「PTA(父母と先生の会)」という名前だけのこと。むしろ、1920年代から当時の文部省が家庭教育振興のため、各小学校に設置を目指した「母の会」や、30年に同省が創設した「大日本連合婦人会(連婦)」との連続性に着目すべきです。戦後、PTAを組織化できた背景に、戦前に設けられた母の会などの存在があり、「看板の塗り替え」だったことは日本PTA全国協議会も認めています。
-今のPTAに何が引き継がれているのですか。
母の会も連婦も「母親の奉仕と修養」を名目に、女性を国家総動員体制に組み込むことを狙った団体。町内会に結び付けられ、言われたことに従わせられたり、学校の「下働き」をさせられたり、自分たちに決定権がない今のPTAにつながります。「強制加入」問題や、「あの人は楽をしてずるい」などと足を引っ張り合うPTAの悪弊には歴史的な経緯があるのです。
「共働きが増えて大変」では根本解決できない
-各地でPTA改革の動きが出てきています。
PTAは任意の市民組織なので、行政や国の介入は許されない。よって行政や地域の「下請け仕事」をする必要はないんです。「共働きが増えて大変。業務を簡略化しよう」では小手先で根本解決にならないと思います。
-フィンランドにPTAのような組織はありますか。
「親達の組織」という保護者組織があります。学習環境の向上のため行政に要求したり、先生と話し合ったりします。やりたいと考える親が集まるだけで加入率は10%程度。すべての学校にあるわけでもない。独立組織で、上部組織や行政の口出しはあり得ませんよ。
今の枠組みでは結局、現状維持…危機感が必要
-学校と向き合う親の団体は必要です。PTAではダメでしょうか。
行政の言いなりでなく、ものを言える組織が必要です。学校で起きている課題に対して意見を伝えたり、親が感じる問題を話し合ったりできる団体であればいいですね。その場合、学校単位の団体で十分。地域や全国の上部組織などはいらないと思います。
-改革のうねりを進めていくためには、何が必要でしょうか。
解決へ声を上げている全国の人たちがネットワークをつくって取り組むのはその一つではないでしょうか。「子どもを学校に通わせる親が抱える問題」を社会問題として可視化すべきです。100年近く前から続く根が深い問題。今ある枠組みの中での改革では結局、延命や現状維持になってしまう、ぐらいの危機感で議論することが必要だと思います。
岩竹美加子(いわたけ・みかこ)
東京都生まれ。息子の小学校でPTA非加入を許されなかった体験などが、PTA問題を論じるきっかけに。ヘルシンキ大教授などを経て、終身の名誉タイトルである同大非常勤教授。著書に「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」など。
〈インタビュー・中〉はこちら↓
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