茨城県のeスポーツ奨励に疑問の声 初の選手権開催も…専門家「ゲーム依存対策が不十分」

鈴木学 (2019年10月3日付 東京新聞夕刊)
子育て世代がつながる
 茨城県がコンピューターゲームの腕前を競う「eスポーツ」の普及に懸命だ。開催中の茨城国体で都道府県対抗選手権を初めて開くほか、常設競技場の構想を持ち、先進県を目指す。前のめりに見える取り組みの一方、依存対策は不十分で、識者は「行政が依存物にお墨付きを与えるのか」と県の姿勢を疑問視する。
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8月にあった国体eスポーツの茨城県代表を決める予選会=水戸市で(水谷エリナ撮影)

水戸に「アカデミー」 県職員がクラブも結成

 「今、水戸駅南口にeスポーツのコスチュームを着た私がドーンとポスターになってるんです」

 茨城県公認キャラクター「茨ひより」が配信動画で、都道府県対抗選手権をPRする。選手権は国体の文化プログラムで10月5、6日につくば市で開かれる。サッカーゲームなど3種目で、全国の予選会を勝ち上がった代表が画面を前に戦う。

 県は水戸市に「いばらきeスポーツアカデミー」をつくり、関連ビジネスへの参入企業向け講座などを開く計画だ。県庁内には県職員55人によるeスポーツのクラブも結成された。国体は予選会で敗退したが、今後も活動を続ける。

WHOが疾病分類 「酒やたばこ勧めるのと同じ」

 ただ、eスポーツの普及には危険性も伴う。世界保健機関(WHO)は今年、「ゲーム障害」を新たな依存症として疾病分類に加えた。ゲームにのめり込み、依存症が増える懸念だ。

 ゲーム依存に詳しい国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の中山秀紀医師は「行政は本来、住民の健康を守る側のはずなのに、依存物であるゲームの推奨は酒やたばこを勧めるのとあまり変わらない」と語る。

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 ゲームは酒などと違い法的規制がなく、「未成年者でもとことんできる」と指摘。深刻な場合は引きこもりになり、重症になるほど社会から遠ざかり、問題を見えにくくするという。

県の反論「相手は人間。将棋と変わらない」

 茨城県産業政策課の小川悟課長補佐は「eスポーツの場合、ゲームは媒体で相手にするのは人間で、将棋などと変わらない。仲間と協力して相手に勝つために戦略を練り、技を磨く。アカデミーではマイナス面もきちんと伝える」と反論する。

 現在の県のゲーム依存対応は、県精神保健福祉センターが電話や面談で相談に応じ、内容によって専門機関につなぐ程度。県によるとゲーム依存の相談は2016年度が2件、17年度が5件、18年度が10件と増加傾向だが、患者数など実態は分かっていない。

 中山医師が訴えるのは予防教育とルールづくりだ。ゲームを始める年齢が早いほど依存リスクが高まるとの統計がある。保護者に依存リスクを伝え、時間で規制させるなどの予防教育が必要で、中高生には「依存症教育があってもいい」と提案する。

eスポーツとは

 エレクトロニック・スポーツの略で、コンピューターゲームを使った対戦をスポーツとして捉える際の名称。種目は格闘やスポーツなどさまざまで、茨城国体の文化プログラムとして開催する「eスポーツ」選手権は、レースゲーム「グランツーリスモ」、パズルゲーム「ぷよぷよ」、サッカーゲーム「ウイニングイレブン」の3タイトルで競われる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年10月3日

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