保育料はタダ、15年暮らせば空き家があなたのもの 来たれ!子育て世代

山本哲正 (2018年9月18日付 東京新聞夕刊)
子育て世代がつながる

豊かな自然に囲まれた古里小学校で、休み時間にバドミントンなどを楽しむ子どもたち=東京都奥多摩町で

 一極集中で人口が増え続ける東京都だが、西多摩地域は例外だ。都によると2005年に人口減少が始まった。中でも高齢化率が高い奥多摩町は、歯止めにあの手この手。この3年余りで、人口約5200人の5%近い約240人の新規定住につなげたユニークな住宅支援策が注目されている。 

奥多摩町、人口減にユニーク策 240人が新規定住

 「頑張れー!」。山々と多摩川に囲まれた奥多摩町立古里(こり)小学校の校庭に、バドミントンなどで遊ぶ子どもたちの歓声が響いた。全児童84人は、学年を超えて一緒に遊ぶ。同小に通うきょうだいの母親、橋本葵さん(32)は「みんな、きょうだいみたい。私も知らない子は一人もいません」と笑顔で語る。

 橋本さんは15年7月、練馬区から町に移住した。活用したのは、町の「いなか暮らし支援住宅・若者定住応援住宅」制度。所有者から町に寄付された空き家に固定資産税相当の年間1000円~4万円の使用料で暮らせる。移住して15年で土地と建物を譲り受ける。橋本さんは水回り中心に500万円かけてリフォームし、うち200万円余りは町の助成を活用した。

医療費、通学費、保育料を全額助成します

 高校生までの医療費、小中高生の通学費、保育園の保育料を全額助成する町の子育て支援の充実ぶりも、6人家族で4人の子を育てる橋本さんにはありがたい。「練馬では保育園に入れなかったけど、奥多摩では求職中でも利用できました」。時間をつくることができた橋本さんは図書館職員に就いた。

 「自治会の中に子どもはうちだけ。ご近所の皆さんが、通学を見守って『今朝も元気だったよ』と言ってくれるんです」

「子育て支援の充実が奥多摩町移住の決め手だった」と振り返る橋本葵さん

少子化対策・若者定住化対策の効果はてきめん

 1955年に1町2村が合併して奥多摩町ができて以来、町の人口は減り続けた。転入人口が転出を上回る年もあったが、児童・生徒数は常に減ってきた。

 危機感を募らせた町は、2015年度からの第5期長期総合計画に、いなか暮らし支援住宅・若者定住応援住宅制度など、少子化や若者定住化対策を盛り込んだ。その効果はてきめんで、15年以降に計78世帯236人が定住。児童・生徒数は昨年度から前年度比プラスに転じ10人増。本年度も3人増だった。

町全体のことを考えれば、子育て支援

 結果が出始めた今こそ「住民の理解が大切」と考える町はこの夏、全21自治会を対象に18会場で意見交換会を開いた。

 「全国の過疎地域で学校が統廃合されて活性化された地域はほぼありません。保育園、学校を維持するためにも定住対策は必要です」。白丸自治会の役員ら15人が集まった意見交換会で、町の若者定住化対策室長を務める新島和貴さん(49)が訴えた。

 自治会の市川久雄会長(68)は「このままでは自治会も成り立たなくなると私たちも危機感を持っていた。役場も町全体のことを考えて子育て支援などを推進している」と納得顔だった。

海外からも注目!視察で「勉強になった」

 空き家の有効活用は、海外からも注目されている。今年7月には韓国の広域自治体協議体の視察もあり、堤川(チェチョン)市職員は「韓国でも空き家問題があり勉強になった」と話していた。

 新島さんは「支え合える地域を復活し、子どもからお年寄りまで幸せに暮らせる町づくりが大きな目標です」と見据えた。

 

西多摩地域の人口減少

 東京都男女年齢別人口の予測によると、都内の総人口は今後もしばらく増加し、2025年に1408万人でピークを迎える。多摩地域の人口は先に、20年の424万人をピークに人口減少に向かう。中でも、奥多摩町や檜原村、青梅市など8市町村で構成される西多摩地域は既に05年の40万人をピークに減少に転じている。同地域は、高齢化率も都内で最も高い。山間部に位置し、林業の衰退の影響を受けてきた檜原村、奥多摩町は特に高齢化率が高く、45%を超えている。

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