子どもの味方です「無敵のおばちゃん」 原点は幼少時、友だちのお母さんに言われたこと

吉岡潤 (2020年4月6日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 「子どもの味方である無敵のおばちゃん」。神奈川県平塚市のNPO法人「未来経験プロジェクト」理事・堤園子さん(44)は、目指す姿をそう表現する。
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「未来経験プロジェクト」理事の堤園子さん

育児相談から職業体験まで 一級建築士の顔も

 バイタリティーあふれる。神奈川県平塚市こども家庭課の嘱託職員として子育ての相談や児童虐待の対応にあたる。市役所から外に出れば、NPO法人「未来経験プロジェクト」のコーディネーターという肩書で、子どもの職業体験や農業体験、子ども食堂の運営、学習支援に飛び回る。

 平塚市で生まれ育った。幼いころ、「何かあったら言いなさい。必ず助けてあげるから」と言ってくれた友だちのお母さんがいた。その言葉が心に響いて残り、「私も助ける側になりたい」と思った。

 中学から大学まで子どもたちと遊ぶボランティア活動に身を入れた。大学では「人が集まる場所をつくろう」と建築を学んだ。設計事務所に勤め、一級建築士の資格をとった。24歳で舞台美術を担当するつもりで入った劇団では役者もやり、演出助手、セットの制作と何でもやった。

児童養護施設で思い出した「助けてあげる」 

 その間、「人の居場所はどうやったらできるんだろう」とずっと考え続けた。「建物を造っただけでは人は集まらない。演劇をやってみて、人は人に集まってくるんだと気が付いた。私が誰かの居場所になろう」。そう決めた。

 34歳のとき、児童養護施設の求人募集に目がとまった。「雇ってください」と飛び込んだ。そして虐待を受けて施設で過ごすことになった子どもらと接する中で、あの言葉を思い出す。

 「何かあったら助けてあげる」。この子たちにもそう言ってくれる大人がいたら、施設に来ないですんだのでは。

「地域の人と子どもに、顔の見える関係を」

 施設で働き始めて4年。そんなとき、平塚市役所の職員募集を知った。「行政だからできることがあるはず」。挑戦し採用された。以来、市役所の内外で「子どもの味方」として汗をかき続けている。

 耕作放棄地を借り、子どもたちと一緒に野菜を育てて収穫する。それを食材に、子どもと大人が並んで料理と会話を楽しむ、極めて安価な食堂を市内6カ所で開いている。「地域の人たちと顔の見える関係ができれば、子どもたちの変化に早く気づいてあげられるだろうと」。無償で勉強の相談に乗り、食事をともにする「寺子屋」も手掛ける。

 2017年、それら全部の活動をまとめてやろうと、仲間とともにNPO法人を立ち上げた。全国の公務員有志と子育てを応援する会も結成した。「全国、いや世界の子ども、子育てを応援したい」。朗らかに笑いながら、考えるままに走る。

「令和時代の乳母制度」構想

 現在、堤さんが実現に向けて取り組んでいる構想が、妊娠期からの子育てを、テクノロジーを利用して地域で支援する仕組みづくり。母親が発信するSOSを複数の人が即座に受け取って駆けつけられるようなシステムを、企業や大学と連携して開発している。「今は失敗が許されない社会のように感じる。あなたは十分に頑張っているというメッセージを届けたい」と話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年4月6日

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