男性育休「希望は8割、取得は1割」の現状 取りやすくすれば企業にも好影響
「収入減が心配」「迷惑かける」
「今の若い世代は、両親も共働きが当たり前。子育ては、男女平等と考えている」。人材サービス会社パーソルキャリア(東京)の喜多恭子執行役員は言う。
昨年、同社が20~59歳の男性計555人に実施した意識調査で20、30代の8割が「育休を取得したい」と回答した。
一方で厚生労働省によると、法律で定められた育児休業の取得率は2020年度で12.65%にとどまる。同社の調査では40.9%が「収入が減るかも」、続いて「勤務先に迷惑を掛けるかも」(38%)と回答。金銭面での不安や職場への影響を懸念する声も多い。喜多執行役員は「先輩社員のモデルケースが少なく、不安が払拭できていない」と指摘する。
独自制度で育児参加を促す企業も
育児休業と並行して、より利用しやすい独自の制度を整え、男性社員に育児参加を促す企業もある。
トヨタ自動車グループのアイシン(愛知県刈谷市)は、2020年4月に出産1年以内に有給休暇とは別に計5日間休める制度を導入。給与を全額払うようにし収入減の不安を払拭した。その結果、2021年度には対象の男性社員全員が、この制度か育児休業を利用した。
「有給は別用途のために残しておきたい。有給以外で休めるのはありがたい」。同社の伊藤道宏さん(39)は4月に生まれた次男の育児のため制度を利用中。長男が幼稚園から早く帰る日に合わせて休みを取り、妻に体を休めてもらう。
同社の働き方改革を支援するコンサルタント会社「ワーク・ライフバランス」(東京)の大畑慎護経営企画室長は「企業が全員取得を目指せば、育休取得を言い出しづらい空気をなくせる」と指摘する。
意欲が向上 職場への定着が進む
育休取得は、むしろ企業に好影響をもたらすとの調査結果もある。
法政大キャリアデザイン学部の武石恵美子教授(人的資源管理論)らが、2010年に300人以上の企業で部下が育休を取得した管理職1049人に行ったアンケートでは、男性らの育休取得の際の職場への影響が「プラス」と答えた割合は32.3%と、「マイナス」の12.1%を上回った。中でも育休を「歓迎した」と回答した職場では「プラス」の回答が7割を超えた。
武石氏は「仕事を別の人に引き継ぐことで、従来の業務手法や仕事の割り振りが適正だったかなどをチェックする機会になっている」と指摘。「企業は男性育休のニーズに対応する必要がある。仕事だけでなく家庭にも時間やエネルギーを配分してもらうことでモチベーションが上がり、職場への定着が進む好循環につながる」と説明する。
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