児童養護施設で暮らす子どもたちの自立を支援 「笑顔の架け橋に」NPOの名前に込めた思い

井上真典 (2023年6月19日付 東京新聞朝刊)
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ブリッジフォースマイルの取り組みを語る林恵子さん

 NPO法人ブリッジフォースマイル(港区)代表の林恵子さん(49)=世田谷区在住=は、19年前に同団体を立ち上げ、児童養護施設で暮らす子どもたちが退所後に自立できるようになるための支援などを続けている。

ビジネス研修で施設の現状を知って 

 NPO法人を設立したきっかけは、ビジネス研修で、たまたま施設の現状を知ったことだった。当時、大手人材派遣会社「パソナ」に勤務しており、子育てと仕事の両立に悩んでいた。

 キャリアアップを目指し、申し込んだ社外のビジネス研修プログラムのテーマが、児童養護施設と企業の支援だった。「それまで児童養護施設という言葉すら知らなかった」と振り返る。

 研修の一環で施設を訪ね、現場の職員たちと接するうちに、施設の求めていることと、社会的責任を果たすCSR活動で企業が行う支援にミスマッチが起こっていることに気付いた。

 「1企業が1施設にできることは限られる」。施設のニーズと支援をしたい企業の間には、仲介者が必要だと考えるようになり、会社員をしながら立ち上げたのがブリッジフォースマイルだった。子どもたちの未来と施設、社会の架け橋になりたいとの願いを法人名に込めた。

7月に若者たちの声を聞くイベント

 当初は午前4時に起きてNPOの仕事をして、子どもを保育園に送ってから出社していた。だんだん両立が難しくなり退職を決めた。

 会社の代表に、退職理由を説明すると「オフィスはあるの? ここでやったら」と起業を後押ししてくれたという。以来19年間、同社内に無料で事務所を置かせてもらっており「感謝しかありません」と話す。

 NPOでは施設の子どもたちにインターンなどを経験してもらい、働くイメージを描いてもらう取り組みもしている。

 昨年の改正児童福祉法で、2024年から施設退所者の支援をする場を都道府県が設けることが努力義務となり、都や江戸川区などからの委託事業も請け負う。

 虐待などを経験した若者たちが自身の言葉で当時の経験を語り、現在、社会が抱える課題について考えるスピーチイベント「コエール」も毎年、主催している。今年は7月8日にオンラインで開く。「どんな支援が今求められているのか。若者たちの声に耳を傾けてほしい」と話す。

NPO法人「ブリッジフォースマイル」

 児童養護施設や自立援助ホーム、里親家庭などで暮らす児童ら1600人以上を支援する。一人暮らしを始める前の準備セミナーの開催や退所者らの居場所づくり事業なども手掛ける。2021年度は、156企業・団体から寄付などの支援を受けた。7月に開くスピーチイベント「コエール」は無料。法人のホームページなどから申し込める。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年6月19日

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