不登校の理由「いじめ」本当に0.3%だけ? 文科省の学校への調査に疑問 子どもへの調査では25%超 - 東京すくすく | 子どもとの日々を支える ― 東京新聞

不登校の理由「いじめ」本当に0.3%だけ? 文科省の学校への調査に疑問 子どもへの調査では25%超

榎本哲也 (2023年10月19日付 東京新聞朝刊)

教室のイメージ写真

 文部科学省が今月発表した調査で、不登校の理由が「いじめ」という小中学生の割合は、不登校全体の0.3%だった。この結果について有識者や支援団体は「実態とかけ離れている」と指摘。学校への調査だけでなく「当事者である児童生徒に直接聞くなど調査方法の見直しを」と訴える。

不登校の理由を3つまで選択可

 専門家から指摘が出ているのは、文科省が今月4日に発表した2022年度「児童生徒の問題行動・不登校調査」。毎年実施しており、いじめ、暴力行為とともに、不登校の実態を全国の国公私立小中学校などに聞いている。

 調査では、不登校の児童生徒は29万9048人で、10年連続の増加で過去最多を更新。学校が判断した不登校の理由(3つまで選択可)で「いじめ」は954人(0.3%)だった。

小6・中2への調査と比べると

 この結果に疑問を持った不登校新聞(東京都文京区)などの依頼を受けて、東京電機大の鈴木翔准教授(39)=教育社会学=が、他の文科省の各種調査と比較分析した。

 鈴木氏は、文科省の2020年度「不登校児童生徒の実態調査」に着目。小学6年、中学2年へのサンプル調査だが、不登校を経験した児童生徒や保護者が直接回答している。不登校のきっかけが「友達のこと(いやがらせや、いじめがあった)」と回答したのは小学生25.2%、中学生25.5%だった。

子どもと学校の認識に隔たり

 鈴木氏は、両調査はサンプル数が異なり「単純比較できない」とした上で「いじめに対する子どもと学校の認識に大きな隔たりがあるのでは」との見方を示す。

 不登校新聞代表理事の石井志昂(しこう)さん(41)は「学校への調査だけでは、不登校に至る重大ないじめが見過ごされるおそれがある」と懸念を示した。

 文科省生徒指導室は「今年3月に策定した不登校対策『COCOLOプラン』で、一人一人の児童生徒が不登校となった要因を分析・把握できるように、調査内容を見直す方針を盛り込んでおり、2023年度の調査では方法の見直しを検討している」と話した。

22歳の告白 今もよみがえるいじめの記憶 心を削られ、人生を変えられてしまう

写真

小学校でいじめを受け、不登校になった経験を話すさゆりさん=東京都内で

楽しい小学校が…5年生から「ばい菌」

 小学校時代、いじめを受け、先生や周りの大人は訴えに耳を傾けてくれなかった。心の傷が癒えず、中学でも不登校になった。さゆりさん(22)=名字は非公表=は東京新聞の取材に「いじめを受けている子どもたちの気持ちに寄り添ってほしい。苦しんでいることを認めてあげてほしい」と訴えた。

 さゆりさんは4人きょうだいの長女。周囲から頼られる存在で、楽しい小学校生活を送っていた。4年生までは。

 5年生になると、席が近い男子児童のいじめが始まった。近づくと「ばい菌」と言われ、机を蹴られる。給食で机を遠ざけられ、クラス対抗の大縄跳びで負けたのを「おまえのせいだ」とののしられる…。毎日、言葉や態度の暴力が、執拗(しつよう)に繰り返された。

教室内の「序列」 みんな見て見ぬふり

 「きょうは何を言われるんだろう、次は何をされるんだろう。教室に入るのが怖い。物理的な暴力じゃない分、少しずつ静かに、心を削られていくようでした」

 その男子は表向きは「良い子」で、スクールカースト(教室内の序列)上位の存在。そのせいか、同級生も担任も、見て見ぬふり。校内の相談室の先生に訴えたが、「そんなことで負けて、どうするの?」。

 教室に近づくだけで腹痛、動悸を感じ、6月から相談室登校を余儀なくされた。6年生でも教室に戻れず、そのまま卒業した。

 いじめ加害者の男子と離れるため、学区外の中学に入学。「いじめられないキャラを演じなくちゃ」。本来は正義感が強く、自分の意見をはっきり言う性格だが、学校では封印し、目立たないように過ごした。

中3になって体に症状「自分が壊れる」

 中3の夏休み明けに猛烈な腹痛に襲われ、帯状疱疹が出た。病院で「相当なストレスが原因」と診断された。小学校時代の心の傷と、学校で自分を抑え続けたことが、心身を蝕(むしば)んでいた。このままでは自分が壊れる。卒業までの半年間、1日も学校へ行かなかった。

 その後、進学した東京都内の通信制高校では、教員や仲間に恵まれた。「高校の先生は、上下関係でなく、1人の人間として対等に私と向き合ってくれた」

 現在は、不登校新聞のスタッフを務める。以前の自分のように生きづらさを感じている子どもたちと向き合う日々だ。今も時折、いじめの記憶がよみがえり、周囲に当たってしまうことがある。

 「ここまで人生を変えられてしまう。たかがいじめ、と思わないでほしい」 

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年10月19日

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  • こりさなるじ says:

    子どもたちみんなが同じ性格、同じ外見なはずがない。みんなからはみ出してしまう子だっている。

    みんな違う人間なのだから、自分たちと違うからなにか文句を言うのは違うと思う。そのせいで一生の傷になるかもしれないのだ。

    「他の人がしているから自分もしてもいいなんて思わないでほしい」

    その子なりの得意なことや苦手なことを尊重しないといけない。私はそう思いました。

    こりさなるじ 女性 10代
  • 頑固教師 says:

    画一教育の限界が来ているように思う。児童生徒全員がおんなじ学校に通う必要はない。はみ出す子供が出るのは当然だ。個性云々言うのであれば、個性が活きるよう、個々人にできる限り合った形態の学校を用意して欲しい。我々が子供を責任を持って大人に育て上げること、それしか我が国の未来はない。

    頑固教師

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