中学生に「避妊」教えるべき? 性教育めぐり都内中学校を調査

梅野光春 (2018年9月14日付 東京新聞朝刊)
 東京都教育委員会は13日、都内の公立中学校などの校長を対象に、性教育の実施状況を初めてまとめた。学習指導要領では中学で「妊娠の経過は取り扱わない」と性交に触れないよう求めているが、「要領にない指導も必要」との回答が半数近くに上り、専門家からは「避妊や性犯罪などの知識も教えるべきだ」との声が出ている。 

「生徒は正しい性知識を身につけている」は52%

 まとめでは、「生徒は正しい性知識を身に付けていると思う」と答えた校長は52%で、「思わない」は47%。「教員は自信を持って性教育を指導していると思う」は51%、「思わない」は49%で、いずれも回答が割れた。「医師ら外部講師の活用が効果的だと思う」は89%に上った。

 また、全体の9%(55校)では、指導要領に含まれていない性教育を実施。避妊法が27校と最多で、中絶(11校)、コンドームの利用(5校)などと続いた。

 調査は、都教委が来年3月までに改訂する「性教育の手引」の参考にするため、中高一貫校の中等部などを含む624校を対象に実施。全校から回答があった。都教委は「結果を分析し、手引の改訂に反映させたい」としている。

識者「避妊など幅広く教えて」

 東京都内では3月、足立区立中学校の3年の授業で、学習指導要領にない避妊法や中絶などを説明。自民都議が「不適切だ」と問題視し、都教委幹部が議会で「課題があった」との認識を示した。だが、4月の都教委定例会では、委員から「正確な性情報を与えることが子どもを守る」「現場の先生は萎縮せず、積極的にやってほしい」との意見も出ていた。

 今回の調査結果について、性教育を実践する教職員や大学教授らでつくる「“人間と性”教育研究協議会」代表幹事の水野哲夫さん(65)は「校長自身が子どものころ十分に性教育を受けておらず、教える自信も知識もない」とみる。それでも、「要領にない指導も必要」と考える校長が半数近くおり、性教育の充実に理解を示す校長は少なくないとみられる。

 正しい性知識を身に付けている生徒が半数超との調査結果には、都内の中学で昨春まで約30年勤めた元女性教諭(59)が「もっと少ないはず」と指摘。「望まない妊娠などの課題を教えず、保健体育の授業をこなすだけで『生徒に教えた』と思い込んでいるのでは」と疑問視する。

 水野さんも「都教委の言う中学の性教育は体の発達が中心で領域が狭い。避妊や性犯罪などの知識も教えるべきだ」と指摘する。

 外部講師の活用には理解する声も。中高生向けの性教育で外部講師を務めるNPO法人ピルコンの染矢明日香理事長(32)は「普段、顔を合わせる生徒から『先生の実体験を教えて』と聞かれると教諭も困惑するし、男性教諭が女子生徒に性教育をするとセクハラになるのではという不安も聞く」と明かした。

学習指導要領とは

小中高校で教えなくてはならない最低限の学習内容を示した教育課程の基準。約10年ごとに改定され、教科書編集の指針にもなる。文部科学省の諮問機関「中央教育審議会」の答申に沿って、文科省が策定する。

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