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風疹をなくそうの会「hand in hand」役員 大畑茂子さん 妊娠中に風疹、でも娘は強く育ってくれた

(2018年12月9日付 東京新聞朝刊)

家族のこと話そう

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3人の娘について話す大畑茂子さん(黒田淳一撮影)

「堕ろしてから帰るやろ?」と医師に言われ…

 三女を身ごもって14週目に、風疹で入院しました。隔離室で1週間、高熱と発疹に苦しみながら「大変なことになった」と思いました。母親が妊娠初期段階で風疹にかかると、先天性風疹症候群(CRS=母子感染で起きる目、耳、心臓などの障害)のリスクが子どもに出てしまうからです。

 「大畑さん、堕(お)ろしてから帰るやろ?」。退院する時、医師が軽い口調で言いました。その言葉にショックを受け、医師が説明する手順を「無理!」と思い、そのまま帰りました。後日、駅のホームをショックを引きずったまま、当時2歳の次女の手を引いて歩いていました。「消えてなくなりたい。このまま電車に飛び込んだら楽になるかも」と考えていると、次女が私の顔を見上げ、「お母ちゃん、泣いたらあかんよ」と言ったんです。無口な子だったのにね。抱き締めて、「せやね、帰ろう」と号泣しました。

 私は産むつもりでした。最初は悩んでいた夫も、「健康な体に生まれても先はわからない。産もう」と言ってくれました。

32週で陣痛、36週で生まれた三女

 CRSは早産が多く、私も32週で陣痛が始まり、破水しました。本格的な破水ではなかったので入院し、薬と安静で36週までもたせました。その間、何度も陣痛があり、分娩(ぶんべん)室を出たり入ったり。当直の医師が無事に生まれた三女を抱き上げて「見えるか? 聞こえるか?」と呼び掛けた時、「やっと会えた」と涙が出ました。

 三女は右耳が軽い難聴ですが、視力や心臓に異常はありません。補聴器は使わず、普通学級に通いました。聞こえにくい分、集中力が高く、成績は良い方です。ただ、本人には内緒で、中学卒業まで「席は一番前に」と学校に頼んでいました。高校入学前に知った三女は「何回くじを引いても一番前。変やと思った」と大笑いして「もう大丈夫。私は誰にでも『聞こえなかった。もう一回言って』と言えるから」。強くなりました。

 今は大学生。中学の国語教師を目指しています。「友人は少ない」と言っており、教師を志すのは「生きづらさを感じている子たちに『群れなくても生きていける』と伝えたいから」だそうです。

不安も後悔も消えないけれど…根絶誓う

 長女と次女は社会人に。3人とも小さいころから、こちらが変に思うくらい仲良し。三姉妹の誰が欠けることも考えられません。それでも「CRSが原因で今後、別の病気や障害が出るかも」との不安は尽きません。「妊娠中の私の不注意で、いろいろ背負わせてしまった」という後悔も消えません。風疹は防げる病気。一日も早く根絶できるよう、私なりに頑張ります。

おおはた・しげこ

 1966年生まれ。大阪府出身。2013年、「風疹をなくそうの会『hand in hand』」役員に。同会は来年2月24日、CRSの球児たちの実話をもとにした舞台「遥(はる)かなる甲子園」を東京都渋谷区で上演する。同会がクラウドファンディングで資金を募り、実現した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2018年12月9日