わが子と向き合い、子ども時代の自分を許せた〈古泉智浩さんの子育て日記〉50

(2024年2月14日付 東京新聞朝刊)
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自宅でギターを練習するぽんこちゃん

古泉智浩さんの子育て日記

子どもが欲しくない若者のこと

 若い世代で子どもが欲しくない人が増えているというネット記事を読みました。貧困の問題や生き方の多様性などいろいろな要因があります。僕自身、若いころに子どもが欲しかったかと言えば、まったく欲しくありませんでした。自分のことで手いっぱいどころか、自分のことすらままならない状態で、子どもや配偶者の面倒まで見られないと考えていました。「人は一人では生きていけない」とは言いますが、できることなら一人で生きていきたい。今、自分が20歳だとしたら、同じように考えていたと思います。

 実際、子育てにお金は掛かります。漫画の仕事は激減し、何年も貯金を取り崩して生活しています。食費、習い事、服や靴などお金に羽が生えて飛んでいくような感覚です。

 しかし、54歳の現在、子どもと妻がいてくれることで、自分がどれほど救われているのか伝えたいです。僕は団体行動が苦手で、孤独がまったくつらくないタイプです。長年ほぼ1人で仕事をしています。そんな自分ですら、子どもを保育園に送っていくと、「今どうしてるかな」と恋しくなります。うまく説明できないのですが、とにかく家族がいてくれないと生きていけない感覚があるのです。

小3の時…今も悔やんでいる失敗

 僕は子ども時代の失敗で、いまだに思い出しては悔やんでいることがあります。小学3年生で近所の友達親子と旅行に行った時のこと。当時、早く帰って「天才バカボン」の再放送がどうしても見たくて、帰りのバスの時刻を「早い時間がいい」と主張しました。せっかくの旅行なのだからと、遅いバスで帰ることに決まったのですが、納得できなくて騒ぎ続けました。大人になった今でも思い出すたび「どうして楽しい雰囲気を壊すことをしてしまったのだろう」と恥ずかしくて仕方ありません。

 ある日、ぽんこちゃんの誕生日祝いのために予約していたレストランに行きました。お兄ちゃんのうーちゃんが、お店を気に入らず「食べたくない」と机につっぷしたのです。僕は、「子どもだからしょうがない」と思えました。その瞬間、自分が後悔してきた罪を思い出し、帳消しになった心地がしました。初めて「子どもだから仕方ないよね」と自分を許せる感覚になったのです。

 本当に何も食べないうーちゃんに、僕の子ども時代の失敗談をしました。「思い出すたびに、ワーって叫びたくなるんだよね」と話すと、うーちゃんはハッと顔を上げてご飯を食べ始めました。

 子どもがいてくれて「幸せ」というよりは、僕にとっては「救い」という方がしっくりきます。

古泉智浩(こいずみ・ともひろ)

 漫画家。養子の9歳男児うーちゃんと、6歳女児ぽんこちゃんを育てる。

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