東京都の私立高無償化、優先順位が違うのでは 高収入世帯に拡充しても「サポート校」は補助なし

(2020年2月14日付 東京新聞夕刊)
 〈取材ファイル〉東京都は新年度から、私立全日制高校の授業料実質無償化を、国の制度に上乗せする形で年収910万円未満の高収入世帯まで拡大する方針だ。一方で、学校になじめず、通信制高校に進学する生徒に学習の支援をする「サポート校」と呼ばれる民間の教育機関に対しては、行政の補助はなく、生徒が費用負担に苦しむケースもある。優先順位が違うのではないか。
社会

勉強したり、スタッフとおしゃべりしたり、思い思いの時間を過ごすサポート校の生徒ら=東京都千代田区で

サポート校は不登校になった子の「伴走者」

 文部科学省の有識者会議の2017年のまとめによると、全日制に比べて通信制の生徒は、不登校経験者や、発達障害などで特別な支援が必要な割合が高い。サポート校は、通信制高校と連携してこうした生徒をきめ細かに支える。提出するリポートの指導をはじめ、学習の遅れや生活面の面倒をみることもある。学校から遠ざかっていた子の「伴走者的な存在」といえる。

 東京都千代田区のサポート校を訪ねた。「ここでは自分で決めたことを勉強できる」。都外の通信制に籍を置きつつ、NPO法人高卒支援会の運営するサポート校に通う女子生徒(15)は充実した表情で話した。

年間授業料50万円 バイトで賄う生徒も

 中学時代に学校を休みがちになり、高校入学直後に退学。今は週5日、サポート校で勉強し、大学進学を目指す。心配なのは金銭面。アルバイト代でサポート校の費用を賄っており「受験勉強で忙しくなるとアルバイトができなくなる」と漏らす。

 通信制に詳しい出版社「学びリンク」によると、サポート校の平均授業料は年間50万円で、私立全日制の授業料より高額な場合も。高卒支援会のサポート校も年間50万~70万円で、杉浦孝宣代表(59)は「寄り添って支援するにはスタッフの人件費が必要」。低収入世帯の子には、同会への寄付から奨学金を出すなどしている。

高収入層への財源52億円 振り分けては?

 有識者会議のまとめは、通信は経済的な困難を抱える生徒の割合が「相当程度高い」としている。にもかかわらず、東京都は高収入層への私立高授業料補助を行おうとしている。小池百合子都知事の「家庭の経済状況などにかかわらず(学ぶ)希望をかなえられることが、人を育てていく東京の象徴になる」との意見は評価できるが、補助を本当に必要としている生徒たちへの救いとはならない。高収入層向け授業料補助の財源は52億円。一部でもサポート校に振り分けることを検討してほしい。

サポート校とは

 通信制高校と連携し、学習面や生活面を支援する民間の教育機関。少人数制で、体調などに合わせて通学日数や時間を決められる。学校教育法の定める学校ではなく、フリースクールや塾などと同じ扱い。文部科学省によると全国に1234校(2016年5月時点)あるが、在籍者数は把握していない。学びリンクによると、私立通信制高校の都内の生徒は約1万3000人(2017年)おり、相当数がサポート校を利用しているとみられる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年2月14日

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