重度障害の子たちが自宅で学べるように 特別支援学校教諭の松本さん、手作り教材で訪問指導 「工夫で世界を広げられる」

(2020年10月7日付 東京新聞夕刊)
子育て世代がつながる
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数字を学ぶ岡田貴一さん(右)。正解するとうれしそうに拳を突き上げた=東京都中野区で

 「どんなに障害が重くても、誰もが分かる力を持っている」。小児病棟にプロのアーティストを派遣する認定NPO法人のメンバーで、特別支援学校教諭の松本健太郎さん(47)=東京都杉並区=は2年半前から、重度心身障害者の自宅を訪問し学習支援をしている。個性や発達に合わせた教材を使い、個々の可能性を引き出す喜びを感じながら、特別支援学校卒業後の学びの場づくりを模索する。

長さの違うブロックで数の概念を感じる

 「6引く3は?」

 9月上旬、松本さんは、特別支援学校高等部1年の岡田貴一さん(16)=中野区=と引き算を解いていた。岡田さんが「6」「3」と書かれた長さの違う木のブロックに触れた後、文字盤の「3」を指す。松本さんは「正解。いいね」。岡田さんは満面の笑みで応えた。「重さや長さで数の概念を感じることも大事」と松本さんが解説する。

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松本さんが手作りした文字盤

 脳性まひで体幹機能や呼吸機能に障害がある岡田さんは、新型コロナウイルス感染予防のため通学はせず、自宅でオンライン授業を受けている。学校から漢字や計算などの宿題が郵送されるが、母美奈子さん(50)は「学校では一人一人の発達に合った学習は難しい」と話す。松本さんの訪問時は美奈子さんとヘルパーが同席して教え方を学び、自宅学習を支える。

個に応じた教材 卒業後も学べるように

 松本さんによると、特別支援学校の教員たちには時間的余裕がなく、予算も限られるため、個々の子どもたちに応じた教材を用意することは大変困難だ。さらに、経管栄養やたんの吸引など医療的ケアが必要な子どもたちは、卒業後の学びの機会がほとんどないのが実情という。

 松本さんは2015年から2年間、大学院でそれぞれの障害に応じた教材開発を研究しながら、重度障害児の自宅を訪問し個別指導を行ってきた。2018年4月、認定NPO法人「スマイリングホスピタルジャパン(SHJ)」の新たな活動として「SHJ学びサポート」を始めた。松本さんをはじめ音楽家、言語聴覚士ら6人のスタッフが、3~21歳の9人の自宅を月1回2時間、訪ねている。

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ホームセンターでそろえた材料で教材を手作りするという松本健太郎さん=東京都杉並区で

 音や光、振動が伝わる教材で手の運動や空間に対する理解を高めたり、口角の動きで操作するタブレット端末のアプリで楽器を演奏したり。松本さんが木材やアルミ素材の円柱などで作った教材もある。「やり方を工夫すればできることがたくさんあり、自分の世界を広げられるということに、本人や保護者が気付いてくれる」と手応えを語る。

首都圏中心に11団体のネットワークも

 手法を多くの人に広めたいと、ことし6月、教材に対する考え方や作り方を紹介する冊子「バリアフリー みんなの教材図鑑」を作成し、障害者教育に関わる教員らに配った。保護者などの要望を受け、10月からはSHJ学びサポートのホームページで販売している(A4判70ページ、税込み1000円)。

 重度障害者の生涯学習を支援する取り組みは少しずつ広がっている。2017年12月に設立された「重度障害者・生涯学習ネットワーク」には、SHJ学びサポートなど、首都圏を中心とした11団体が加盟する。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年10月7日

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