今年はできた入学式準備 コロナ禍で気づいた何げない日々の大切さ 横浜市立小の1年

(2021年5月5日付 東京新聞朝刊)
 今も広がる新型コロナウイルスは、この1年と少しで私たちの生活を大きく変えた。我慢の多い毎日でも、子どもたちは小さな楽しみや喜びを見つけ、「当たり前にあること」の大切さを知る。コロナの時代を生きる子どもたちを、大人はどう見守ればいいのか、考えたい。
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入学式会場となる体育館に椅子を並べる新6年生たち=いずれも横浜市青葉区の市立山内小学校で

失って気づいた「最上級生の心構え」養う機会

 「白い花、まだあるかな」「国語の教科書配るね」

 4月6、横浜市立山内小学校で、新6年生が翌日の入学式の準備をしていた。会場の体育館に椅子を並べ、げた箱や廊下を雑巾がけ。新入生の教室も掃除して、紙で作った花や輪っかで飾り、一人一人の机の上に教科書や防災ヘルメットなどを置いた。

 3月に卒業した6年生は、昨年の春に新型コロナウイルスが広がっていたため、1つ上の学年の卒業式や1年生の入学式の準備をできないまま、最終学年になった。「6年生を送り出し、1年生を迎える準備をして、最上級生としての心構えができる。なくなって初めて、その大切さに気付いた。口で言うよりずっと効果があるんです」。佐藤正淳(しょうじゅん)校長が、子どもたちのてきぱきと動く姿に目を細めながら話す。

 作業を終えた山本結衣さん(11)は「私が1年生の時の6年生も同じようにやってくれたんだな、と思いながら、教科書をそろえたり、黒板を拭いたりした」と、入学した5年前を思い出すように話した。

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紙で作った花や輪飾りで新入生の教室を飾りつける新6年生たち

保護者が料理動画、「リモート遠足」もできた

 コロナで、山内小でも遠足や宿泊学習など多くの行事が中止になった。調理実習や水泳といった実技、学年を超えた縦割り活動もできなかった。給食は今も、みんな黒板の方を向いて、しゃべらずに食べる。

 コロナの中での生活では、たくさんの人が狭い場所に集まったり、近づいたりする「3つの密」をやめるように言われる。

 いろいろな制限はあるけれど、だからこそ生まれた楽しみも。保護者のフランス料理のシェフは、親子でできる料理の作り方の動画を学校のホームページで流した。北海道旭川(あさひかわ)市の旭山動物園とオンラインでつながって、パソコンの画面上で園内を巡る「リモート遠足」もあった。

最善探して工夫する大人の姿、見せ続けていく

 6年の斎藤楓花(ふうか)さん(12)は「友達と話したり、授業を受けたり、何げなく過ごす日が大切なんだと感じた」と、この一年を振り返る。下沢医(いやす)さん(11)は「4年生以上が参加できる運動会の応援団が、去年は6年生だけになってしまって残念だった。今年はやりたい」と楽しみにする。

 佐藤校長は「心も体も密な関係をつくるはずの学校でそれができず、心にぽっかり穴があいたような1年だった」と話す。そしてこう続けた。「でも、制限があればあるほど、人は工夫をするんです。誰も正解が分からない中で、一番よいものを探して工夫する大人の姿を、子どもたちに見せ続けていきたい」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年5月5日

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