見えない本音、届かないSOS ヤングケアラーの実態を描く演劇 座・高円寺で

五十住和樹 (2023年1月14日付 東京新聞朝刊)
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けいこをする出演者たち=東京都板橋区で

 ヤングケアラーを主人公にした演劇「さなぎになりたい子どもたち」が1月18日から、東京都杉並区の座・高円寺1で上演される。公立中学校の保健室を主な舞台に、精神障害がある母親をケアする3年生女子生徒(15)や友人、先生たちによる卒業までの物語だ。背景にある貧困や、業務負担が過大で疲弊する先生の姿、コロナ禍の中で生徒が抱える問題が見えにくくなっている現状なども描かれる。 

中学校の保健室が舞台 養護教諭に取材

 演劇集団Ring-Bong(リン・ボン)の公演。主宰の劇作家山谷(やまや)典子さん(46)は、2年前に新聞記事でヤングケアラーの存在を知り、都内などの中学校の養護教諭らに取材。各家庭の経済的な格差や、余裕がなく生徒と十分に話ができない先生たちの現実を聞いた。祖母をデイケアに送り出すため週2回遅刻する生徒や、夜に祖母のトイレの世話をして寝不足を訴えるヤングケアラーの実例も聞いた。

 取材で特に感じたのは、「学校には『こうあるべきだ』という両親がそろった理想の家庭像がある」という点。「枠からはみ出した親は『変な人』と見られ、遅刻が多いなどこぼれ落ちた子は『変な子』と決め付けられる」と言う。

 物語でも、何げない会話でこのような先生たちの感覚が表現されている。保健室を主な舞台にしたのは、コロナ禍で先生や友人との会話が減る中で養護教諭への相談が増え、担任に話さない本音の一端を語る生徒が多いと知ったからだ。だが、ベテラン養護教諭は「生徒が抱える問題を見つけるのは難しい。SOSを出せない生徒は保健室にも来ない」と山谷さんに話したという。

本人が「世話が当たり前」届かない支援 

 2021年4月に国が公表した初の実態調査では、中学2年の5.7%が「世話している家族がいる」とした。世話する対象はきょうだいが61.8%、父母は23.5%、祖父母が14.7%(複数回答)。父母のうち身体障害は20%、精神疾患(疑いも含む)は17.3%だった。また、家族の世話をしている半数近くの生徒が「自分はヤングケアラーに当てはまらない」と回答。世話が当たり前と考えている生徒が多く、支援の仕方が難しい実態が浮かんだ。

グラフ 家族の世話をしている中学2年生に質問

 2022年4月には、学校や福祉・医療などの専門職、地域などが連携して取り組む支援マニュアルを厚生労働省が各自治体に通知。「本人の意思を尊重し、本人や家族の思いを第一に考えて支援を検討する」「本人や家族に寄り添い長期的なかかわりが必要」などとした。

 山谷さん自身、4歳の男児を育てる母親。「未来に向けて子どもの道を増やしていくべき親や学校が、道をふさいでしまうことがある。舞台を見て考えてもらえれば」と話している。

 上演は22日まで。全席自由席で4500円。問い合わせは劇団の電話=080(3385)9451(平日正午~午後5時)=で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年1月14日

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