小学校からウサギが減少…なぜ? 夏休みの餌やりなどが教職員の負担に

小寺香菜子 (2023年2月28日付 東京新聞朝刊)
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飼育しているウサギと触れ合う飼育委員の児童たち=東京都世田谷区立京西小学校で

 

 今年のえとにちなみ、学校のウサギ飼育について東京23区の各教育委員会を取材したところ、9区が「減少傾向にある」と答えた。残る区の大半は飼育数そのものをカウントしていないことから「分からない」としており、かつておなじみだった学校のウサギが減りつつある傾向がうかがえた。背景には、夏休みの餌やりなど先生たちの負担や、子どもの動物アレルギーなどさまざまな課題が浮かぶ。

教員の負担軽減に工夫を

 3匹のウサギを飼う世田谷区立京西小学校。小屋の掃除をしていた飼育委員長の6年生、丹下愛麗(あいり)さん(12)は「動物はあんまり好きじゃなかったけど、委員になって好きになった」と笑みを浮かべた。

 かつては、土日や長期休業期間には教員が登校したり家に持ち帰ったりして給餌を担っていた。だが、最近は警備員に委ねたり飼育委員の家庭で「ホームステイ」したりと教員の負担軽減に工夫を凝らす。

 動物を持ち帰った経験があるという飼育委員担当教諭の苅野淳さん(34)は「自分は動物好きだから世話をしていたが、教員みんながそうではないと思う。いろいろな人が関わり、愛情を持って飼育することが必要だ」と話す。

世田谷区では10年で半減 

 飼育を続ける小学校は少なくなっている。世田谷区教委によると、2012年度は42校で計88匹のウサギを飼っていたが、2022年度は27校、40匹で、10年間で半減した。

 東京新聞は23区の各教委に、区立小のウサギ飼育数の増減や傾向を尋ねた。増減が確認できる数値があるのは世田谷を含め8区。期間や時期はばらつくが、いずれも減少している。うち品川区は「減少傾向にあるかどうか分からない」としているが、7区は「減少傾向にある」と答えた。

 増減データがないのは15区で、中野区と江戸川区は「減少傾向にある」、残る13区は「分からない」と答えた。13区のうち、都心の中央、千代田、港の3区は22年度の飼育数のみ回答し、いずれもゼロ~3匹と少なかった。

児童の動物アレルギーも 

 なぜ学校のウサギが少なくなっているのか。3年間で飼育数がほぼ半減した練馬区をはじめ複数の区が「長期休業中の世話など教職員の負担」を理由に挙げた。足立区は、ウサギに限らず生き物全般の飼育数が減っているとした上で「鳥インフルエンザが流行した時に『それ以上飼わない』となった」と振り返る。児童の動物アレルギーの影響も複数の区が指摘した。

 小学校生活科の学習指導要領は「動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して生き物への親しみをもち、大切にしようとする」とした上で「継続的な飼育、栽培を行うようにすること」と定める。文部科学省は「必ずしも哺乳類である必要はない」としている。

学校で動物を飼育するべき? 識者の声

 学校での動物飼育の是非を巡っては、識者の見解が分かれる。

 大手前大(兵庫)の中島由佳教授が2017~2019年に小学校約70校を対象に調査したところ、飼育により他者への共感性や動物への理解が増す効果が見られた。中島教授は「子どもは、ものを言わない動物の世話を通じて体調や気持ちを察し、どうしたら良いか推測するのでは」と有用性を強調する。

 日本動物福祉協会(東京)によると、「ふん尿まみれ」「病院に連れて行ってもらえない」など学校動物の飼育状況の悪さを訴える声が寄せられるという。協会調査員で獣医師の町屋奈(ない)さんは「どれだけの動物が適切に飼育されているのか。学習指導要領を変更し、せめて責任を持てる学校のみが飼う選択制にするべきだ」と提案する。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年2月14日

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