転ばぬ先の「曲がる歯ブラシ」 歯磨き中、喉に突き刺さる事故を防ぎます

(2017年2月24日付 東京新聞朝刊)
 わが子が歯磨き中にヒヤッとした経験、ありませんか?「危ないから歩きながら歯磨きしないの!」と声を掛けても効果がない…と嘆くママ&パパは多く、中には「子どもには歯ブラシを持たせない」なんていう開き直り派も。そこで、歯磨き中に子どもが喉を突く事故を防ぐために開発された「曲がる歯ブラシ」を紹介します。

先端が曲がる歯ブラシを持つ産業技術総合研究所の西田佳史さん=東京都江東区で

 子どもが歯磨き中に喉を突く事故を防ぐために開発された「曲がる歯ブラシ」が注目されている。歯ブラシをくわえたまま転倒するなどして、喉に突き刺さる事故は1~2歳児を中心に多発。専門家らは先端部分が曲がる歯ブラシを使うことで、けがの抑止につながると期待している。

事故多発…1歳児がくわえて転ぶと、喉への負荷は80kg 

 先端部分を押すと、グニャリと曲がる子ども用歯ブラシ。歯ブラシメーカー「DHL」(大阪府八尾市)と、国立研究開発法人「産業技術総合研究所」人工知能研究センターの西田佳史さんが技術提携し開発した。

 東京消防庁によると、2009~13年の5年間で喉やほおに歯ブラシが突き刺さるなどして歯磨き中の子どもが救急搬送された事故は215件発生。うち1歳が99人と最も多い。西田さんが消防庁のデータを詳しく分析したところ、歯ブラシを口にくわえたまま歩いたり、走ったりして転倒した子どもが全体の約7割を占めていた。転んだ場所は布団の上が多く、イスから転落して喉に突き刺さった例もあった。

 西田さんが1歳の子どもを想定して、重りを付けた歯ブラシを落下させる実験をしたところ、立ったまま歯ブラシをくわえて転んだ場合、子どもの喉には約80キロの負荷がかかることが判明。喉に見立てて使った鶏肉には歯ブラシがグサリと突き刺さってしまった。

弾力性の高いゴムで負荷を10分の1に

 こうした喉突き事故を防ぐため、同社が持ち手の首部分に弾力性の高いゴムを使った歯ブラシを開発し、西田さんが安全性を検証。万一歯ブラシをくわえたままま転んでも、喉にかかる負荷を10分の1程度に抑えられるようにした。商品は「まがるハブラシ」と名付けて15年6月から1本550円前後でネットを中心に販売。0~3歳用と3~6歳用の2種類があり、これまでに計12万本を売り上げた。

 八尾市の新門(しんもん)歯科医院では、半年前から「まがるハブラシ」を販売している。新門正広医師は、「習慣づけのために1、2歳の子どもが自分で歯磨きすることは大事だが、思わぬ事故も起きやすい。先端が曲がることで親も安心して使うことができ、奥歯にもしっかりと届くため磨き心地も問題ない」と話す。

親が見守り座った状態で 不安定な場所はNG

 子どもの歯磨き中の事故多発を受け、東京都は昨年7月に消費生活問題の専門家や医師、メーカー関係者による有識者会議を設置。今月14日には先端が曲がるなど歯ブラシを喉に届きにくい構造にして、安全対策を強化するようメーカーに提言する報告書をまとめた。国に対しても、子ども用歯ブラシの安全基準設置を促している。

 報告書では保護者が注意すべき点として、子どもの歯磨きは親が見守りながら座って行わせることや、踏み台やソファの上など不安定な場所で行わせないことなどをあげている。こうした中、ライオン(東京都)は15日から従来の子ども用歯ブラシ「クリニカKid’sハブラシ」を改良し、先端が曲がるようにして販売を開始。ゼロ~2歳用と、3~5歳用の2種類があり、全国のドラッグストアなどで200円前後で販売している。

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