わが子の自転車事故で9500万円…増える高額賠償 保険加入のポイントは?

(2017年5月25日付 東京新聞朝刊)
わが子の自転車の乗り方にヒヤッとした経験、ありませんか? 自転車の男子小学生が60代の女性をはねて重い後遺症を負わせてしまい、保護者が約9500万円の賠償を命じられた判決をきっかけに、「自転車保険」が注目されました。自転車の利用者に加入を義務づける自治体が増えています。自転車保険に入る場合に、選ぶポイントとあわせてお伝えします。

   
 自転車の利用者に、他人にけがをさせた場合などに備えて「自転車保険」への加入を義務付ける自治体が増えている。自転車が歩行者を巻き込む事故が多発し、高額賠償を請求されるケースが増えているからだ。保険会社が補償額の上限を引き上げる動きも広がっている。

「自転車保険は義務」広がる条例化

 自転車事故でけがをした相手に補償をする自転車保険に注目が集まったのは、2013年の神戸地裁の判決がきっかけだった。自転車の男子小学生が60代女性をはねて重い後遺症を負わせたとして、小学生の保護者に約9500万円の賠償が命じられた。

 15年6月には、改正道路交通法施行で、自転車の危険運転などに対する取り締まりが強化された。こうした流れを受けて兵庫県は同年、自転車の利用者らに自転車保険への加入を義務付ける条例を全国で初めて制定。16年には大阪府と滋賀県も後に続いた。

 名古屋市も4月に、高齢者のヘルメット着用などを努力義務に盛り込んだ条例を施行。10月1日からは自転車保険への加入も義務付けられる。いずれの条例も、罰則規定はない。

自動車保険の特約でカバーできるケースも

 全国的に動きが加速している自転車保険への加入義務付け。ただし、「本気で家計を変えたいあなたへ」などの著書があるファイナンシャルプランナー(FP)前野彩さん(大阪市)は「慌てる必要はない。一般的に『自転車保険』と呼ばれているが、実はすでに加入している自動車保険などの特約で、自転車事故の対人・対物補償をカバーできるケースも多い」と言う。

 自転車保険は、日常生活で他人にけがをさせたり他人の物を壊したりした場合に備える「個人賠償責任保険」(個賠)と、自分のけがなどに備える「傷害保険」がセットになった商品が一般的だ。個賠は火災保険や自動車保険などの特約で付けることができ、家族全員が補償対象。上限金額は一億円の保険会社が多く、無制限の商品もある。

 各自治体が条例で加入を義務付けていても個賠に入っていれば問題はない。まずは自分が入っている保険を見直し、どんな補償が、いくら必要なのかを検討することが重要だ。

保険を選ぶポイントは「1億円」「示談代行」

 では自転車保険に入る場合に、選ぶポイントは何か。前野さんは補償の上限が1億円以上で、事故の際に相手と交渉する「示談代行サービス」付きの保険を選ぶことを勧める。高額賠償請求が増えていることから、保険会社は個賠の上限額引き上げへと動いている。

 セブン-イレブンで申し込む「自転車向け保険」は、三井住友海上火災保険が年3990円で個人型を販売。69歳までが対象で、需要の高まりを受けて、個賠の補償額を昨年4月に1億円から3億円へ引き上げた。

 NTTドコモの「ドコモサイクル保険」も、昨年10月に個賠の上限を2億円から5億円に改定。ドコモ利用者が対象で個人型が月450円。加入年齢は18~70歳で、携帯電話で申し込む。

 条例で自転車保険の加入を義務付けた滋賀県では、県交通安全協会が独自の「滋賀のけんみん自転車保険」を創設。年間1000円のプランで家族全員の個賠が最高1億円まで補償され、加入の年齢制限もない。昨年6月の募集から予想の2倍以上のペースで申し込みが相次いでおり、約1万2000人が加入している。

自転車事故の現状は 

 警察庁によると、2014年の自転車乗用中の死者数540人のうち、65歳以上が63.9%を占めていた。同年の負傷者数は10万7998人で、15歳以下が17.2%、16~24歳が22.1%、65歳以上が18.5%となっている。「自転車の安全利用促進委員会」が15年に起きた通学時の自転車事故を分析したところ、5、6月に集中。特に高校1年生の事故が突出して多かった。

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