予防接種で子どもが泣かない! 注射の痛みをやわらげる方法 将来、過敏にならないために

(2018年2月27日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

 注射は痛くて当たり前―と思われがちだが、気をそらせる工夫や、肌に塗ったり貼ったりする麻酔剤などで痛みを減らし、不安や恐怖をある程度、取り除くことができる。乳幼児期は予防接種が多いが、痛みや恐怖の記憶が強いと、将来、痛みに過敏になることもある。注射の痛みをやわらげる方法などを専門家に聞いた。

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小暮裕之さん(後方)が見守る中、注射の後もケロリとした表情で風車を吹く野口紗恵ちゃん=東京都江東区で

風車を吹くことで深呼吸すれば…

 東京都江東区の有明こどもクリニック豊洲院。院長の小暮裕之さん(39)が「痛い注射と痛くない注射、どっちがいい?」と聞くと、予防接種で来た女児(4つ)は「痛くないの」。小暮さんは「じゃあ準備するね」と女児の腕を氷枕で冷やし、もう一方の手に風車を握らせた。女児が風車を吹くことに集中するうち、痛がることなく注射は終わった。

 有明こどもクリニックは8年前、注射の痛みを減らす工夫を始めた。「予防接種は良いことなのに、子どもは嫌がり、親は『ごめんね』と謝る状況を変えたかった」と小暮さんは言う。

 会話のできる2、3歳より上の子とは、注射について話してから冷やすことなどを提案。風車を吹くと、おなかに力が入って深呼吸が促され、痛みの軽減につながる。映像や音楽で気をそらせることもある。赤ちゃんに注射をするときは、母乳を与えたり、医師の方を向かせず母親が胸に抱いて安心させる。

クリームの麻酔剤を塗るのも有効

 また昨年からは、年齢を問わず希望者に、塗る外用局所麻酔剤「エムラクリーム」を使い始めた。こうした取り組みで、泣く子は半分に減ったという。

 女児の母親(39)は「別の病院で予防接種した小学1年の子は、すっかり注射嫌い。こんな方法があるなんて知らなかった」と話した。

痛がらせる弊害 小児期の痛みと恐怖の記憶で、将来「痛みに敏感」になってしまう 

 日本では長年、注射などの痛みは「仕方ない」「我慢が大事」とされてきた。だが日本大医学部付属板橋病院(東京都板橋区)痛みセンター長で診療教授の加藤実さん(61)によると、最近は手術やがん治療などを通じ、「痛がらせる」ことは治療控えなどの弊害を生むと分かり、医療行為に伴う子の痛みへの関心も高まりつつあるという。

 痛みの影響は「今」だけにとどまらない。小児期の痛みや、それに伴う不安と恐怖が、将来も人を痛みに敏感にさせることを欧米の学者らが約30年前に突き止めた。以来、予防接種時などの痛みを減らす方法が研究されてきた。

 研究の先進地のカナダでは、薬理学者らが対処法をインターネットで公開。日本では数年前に「エムラクリーム」などの外用局所麻酔剤が医師の処方で使えるようになったが、カナダでは処方箋なしで薬局でも購入できる。

 世界保健機関(WHO)は2015年、予防接種時の痛みの軽減についての方針を公表した。痛みへの対処がなされなければ、接種率の低下につながると警鐘を鳴らす。

予防接種の痛みや不安を減らす主な方法

  • 事前に予防接種の意味や対処法を話す
  • むやみに励まさない(より注射が気になる)
  • 外用局所麻酔剤を使う
  • 乳児は母乳か砂糖水を飲ませる
  • 乳児は保護者が胸に抱く(縦抱き)
  • 絵本やビデオを見る、音楽を聴く
  • 風車、シャボン玉を吹く

(カナダ「HELP in Kids & Adults」の冊子などを基に作成)

 加藤さんは、子どもへの予防接種の意味の説明や、落ち着いて接種できる環境も必要と指摘。日々の診療で忙しい医療者には、「痛みを和らげることは基本的人権の尊重」とし、「子どもの将来を考え、エビデンス(科学的根拠)のある『痛がらせない』方法を取り入れてほしい」と呼び掛ける。また保護者にも、積極的に医師らに相談するよう勧めている。

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