年末年始に注意!子どもの車周りの事故 運転中に泣いて脇見、発進時に車外の死角でひかれる、先に降りて駆け出す…

海老名徳馬、藤原啓嗣 (2022年12月15日付 東京新聞朝刊)
 大阪府岸和田市で、自家用車の座席に取り残された2歳の女児が熱中症で亡くなった事故から、1カ月余りがたった。思わぬ出来事やミスが重なれば「まさか」という事故も現実になってしまう。年末年始は車を使う機会が増える時期。子どもが関係する車周りの事故を防ぐ方法を専門家らに聞いた。

運転中の「ヒヤリ」7割が体験

 子どもを乗せての運転中にヒヤリとした経験がある運転者は69.6%-。

 アクサ損害保険(東京)が保護者に聞いた意識調査は、子どもが関係する自動車周りの事故が誰の身にも起き得ることを物語る。危険を感じた場面は「子どもが泣いたりぐずったりして脇見運転をしたとき」(25.7%)や「学校やお稽古事などの用事に遅れそうになるなど急いで運転したとき」(24.3%)が上位を占めた。

グラフ 子どもを乗せた運転中にヒヤリとした体験

置き去りを防ぐ「荷物の位置」

 岸和田市の事故では、運転していた父親が3人の娘を保育所に送ったが、1人だけ預け忘れたと説明している。自動車部品を扱う「三洋貿易」(東京)が子どもを乗せた経験のある2652人(20~69歳)に聞いた5月の調査では、この1年間で車に子どもを残したまま車を離れた人は、22%にあたる583人に上った。

 「保育園を考える親の会」(東京)の普光院亜紀顧問(66)は岸和田市の事故について「めったにないことだとは思うが、普段送り迎えをしていなくて、考え事をしていると起こり得るかもしれない」と指摘。車を降りた後に必要な荷物を、子どもの座席のすぐそばに置くなどして、子どもに気付けるように工夫したい。普光院さんはさらに「保護者は普段から欠席の連絡を欠かさないようにやりとりを密にして、保育所が異変に気付きやすい関係づくりに努めるべきだ」とも語る。

発進時にひかれやすい3歳以下

 子どもが車の外にいても事故が起こる可能性はある。目立つのが、自宅近くや駐車場などで低速の車にひかれること。公益財団法人交通事故総合分析センター(東京)主任研究員の渡辺泰介さん(52)は「3歳以下の子どもが発進時にひかれるのが特徴的」と話す。

 背の低い幼児は、車の近くだと運転者の死角に入ってしまう。ワンボックス車などの背が高い車は特に死角が広い。

 典型的な例が、家族や近縁者が運転する車の発進時にひかれるケース。動き始めた車の前部バンパーに幼児が接触すると、路面側に倒れやすく、タイヤに巻き込まれがちだという。

 「死角に子どもがいるかもしれないと考える習慣を」と渡辺さん。運転席で死角を確認できるモニターもあるが、画面の起動が発進時に間に合わない場合もあるため注意が必要だ。

 防ぐためには、トラックの運転手などが実施している乗車前に車を左回りに一周する方法や、車の前後を目視するのが効果的。発進前に運転席で前方へ身を乗り出すだけでも、確認できる範囲が広がる。渡辺さんは「動き出してから気持ちが運転モードになる人は多い。運転は乗り込んだときから始まっていると意識してほしい」と呼びかける。

駆け出し防止 必ず手をつなぐ

 子どもが急に駆け出してひかれる例も多い。渡辺さんは「車の近くでは必ず保護者が手をつなぐこと。子どもの後に荷物を降ろすのをよく見かけるが、手をつなげる状態になるまでは車で待機させて」と訴える。

 シートベルトにも注意したい。交通事故総合分析センターの調査では、2001~2018年に車の後部座席に乗っていて、事故で死亡または重傷を負った6~12歳のうち、71%がシートベルトをしていなかった。

 使い方も大切。シートベルトは一般的に身長140センチ以上の体格で有効となるよう設計されている。ベルトがずれると十分な着用効果を得られない場合もある。渡辺さんは「腰ベルトは骨盤に当たるように、肩ベルトは胸骨の中央の上を通るようにかけて」と促す。

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