子どもの水の事故を防ぐ2つ鉄則 ライフジャケットと「浮いて待て」

河野紀子 (2023年8月9日付 東京新聞朝刊)

図解 水難事故を防ぐには ライフジャケットなどの選び方、「浮いて待て」のやり方

 子どもが亡くなる水の事故が各地で相次いでいる。海や川で遊ぶ際は必ず、子どもと保護者がともにライフジャケットを着用するよう、専門家は呼び掛ける。万一流されてしまったら無理に泳いだりせず、あおむけに浮いて救助を待つ「浮いて待て」が大切だ。

子どもは体重が軽く流されやすい

 「海や川は自然相手で何があるか分からない。子どもはひざ下の深さの場所で、水遊びをする程度にした方が良い」。明治国際医療大教授で、一般社団法人水難学会会長の木村隆彦さん(61)は警告する。

 海は風や潮の流れの影響を受け、大きな波をかぶったり、打ち寄せた波が沖に戻る時に局地的に起こる強い流れ「離岸流」によって気付かないうちに沖合まで流されてしまったりする。川も急に深くなったり流れが速くなったりし、川底の石やコケに足を取られることも。子どもは体重が軽く、大人よりも流されやすい。ひざ下より浅い場所なら、すべって転んでも自分で立ち上がれるという。

 木村さんによると、海や川で流された子どもはパニック状態になる。泳ぎが得意な大人でも、波や水の流れを受けながら数十キロの子どもを抱えて、岸までたどり着くのはかなり難しい。実際、助けに向かった親がライフジャケット未着用で亡くなった事例も少なくない。

人間の体で浮くのはわずか2%

 水難学会は、流されてしまった時に「浮いて待て」の状態で救助を待つことを勧める。人間の体のうち水に浮くのは、体積のわずか2%程度。背中を下にして両手両足を広げ、あごをそらすと口元が水面に出て、呼吸を確保できるという。

 このとき、パニックになって手足をばたつかせたり、大声を出して肺の空気が出てしまったりすると顔が沈んでしまう。岸にいる人は飛び込んだりせず、ペットボトルなど浮輪代わりになるものを投げ入れて、消防などに救助を求めよう。

大人も必ずライフジャケットを

 子どもの水難事故は毎年夏の時期に多発する。警察庁によると、昨年1年間で海や川などで死亡・行方不明になった中学生以下は26人。うち、7~8月は9人(35%)に上る。今年も先月中旬から

  • 長野市で小学1年の男児
  • 福岡県で小学6年の女児3人
  • 神奈川県で小学5年の男児

が、それぞれ川でおぼれて死亡。沖縄県では、家族旅行中に海でシュノーケリングをしていた小学3年の男児が亡くなった。

 河川に関する調査・研究を行う公益財団法人河川財団主任研究員の菅原一成さん(44)は「海や川では、子どもも大人も必ずライフジャケットを着けてほしい」と力を込める。

密着するサイズ 股下にベルト

 子どもの場合、サイズが大きすぎたり着け方が緩かったりすると、万一の時に水流で脱げてしまう。体に密着できるサイズで、股下にベルトを通すタイプを選ぼう。最近はホームセンターやアウトドアショップでも購入でき、価格は3000~7000円程度。足元は脱げにくいかかとのある靴を用意すれば、けがの防止や流されたときの浮力にもなる。

 菅原さんは「川や海で自然を楽しむ体験は大切。安全に遊ぶためにどうすればいいのか、親子で話し合いながら必要な装備を用意してほしい」と話している。

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