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大津の園児死傷事故「ガードレールあれば防げた」 保育園の散歩、安全対策の死角

稲垣太郎 (2019年5月23日付 東京新聞朝刊)
 大津市の交差点で、散歩中の保育園児らに車が突っ込み、16人が死傷した事故などを受け、21日、政府の関係閣僚会議が開かれた。保育園の増加で、散歩する子どもたちを見かける機会も多いが、国のガードレールの設置基準はあいまいで、判断は自治体任せとなっている。散歩コースの安全対策は、制度から抜け落ちてきたのが実態だ。

保育園児らが死傷した事故現場を調べる捜査員ら=15日、大津市で

事故後にガードレール、ポール設置を決定…予算はあった

 「歩道は非常に広かったが、車がひっきりなしに走っていて、スピードも速かった。保育士たちはその歩道の一番奥に子どもたちを集め、ガードするように立っていた。保育者としてできる限りの安全対策を取っていて、事故に巻き込まれた。ガードレールなどで物理的に被害を防止することができたはずで、残念でならない」

 大津市の事故現場を訪れ、散歩コースも歩いてみたというNPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」の宮田美恵子理事長は声を落とした。

 8日の事故で車が突っ込んだ場所は縁石はあったが、ガードレールはなかった。滋賀県は事故後、緊急対応として交差点の隅に「クッションドラム」と呼ばれる衝撃緩衝材を設置し、ガードレールや車止めの金属製ポールの設置も決定。実施費用は本年度の補修予算で対応するといい、必ずしも財政的な問題で安全対策ができなかったわけではなさそうだ。

国の設置基準「歩行者が多い」「登下校の区間」…該当せず

 県が判断基準にしていたのは、国土交通省が定めた「防護柵の設置基準」に基づき、日本道路協会がつくった「防護柵の設置基準・解説」。車両逸脱による二次被害防止を目的に、防護柵を設置する区間を「歩行者等の通行が多い区間や児童・園児の登下校に利用される区間」としているが、該当しなかったという。

 県道路課歩行者・自転車安全係の竹田昌史係長は「現場の県道は通園路でもなく、歩行者の通行量も少ないので、ガードレールなどの防護柵は設置していなかった。そもそも園児らが散歩していたルートは把握していない」と話す。

文科省の「通学路」は小学校など…幼稚園・保育園は対象外

 国は21日、首相官邸で「交通安全対策に関する関係閣僚会議」を開催。安倍晋三首相が大津市の事故や、東京・池袋で乗用車が暴走し母子2人が死亡した事故を踏まえ、園児らが散歩などで移動する経路の安全確保策などをまとめるよう指示したが、これまではどう対応してきたのか。

首相官邸で開かれた交通安全対策に関する関係閣僚会議=21日

 前出の設置基準を担当する国交省の道路局環境安全・防災課の近藤弘嗣課長補佐は「基準は技術的な助言で、道路管理はあくまでも道路管理者である自治体が行うもの」と説明。文部科学省が所管する通学路は小学校の児童などに関するもので、保育園や幼稚園は対象となっていない。

専門家の指摘「保育園をつくることばかりに目が行っていた」

 NPO法人「保育の安全研究・教育センター」の掛札逸美代表理事は「保育園の散歩ルートの大部分は歩道と車道が分離されておらず、保育士たちが必死に園児を守りながら散歩させている。政府や自治体は歩道と車道の間に物理的な障壁を造るなど、園児が散歩をする道路の安全整備の責任を果たすべきだ」と指摘する。

 宮田氏は「散歩は園児の成長、発達には欠かせないもの。保育園をつくることばかりに目が行き、散歩のルートなどの安全対策がなおざりにされてきた。幼い命の安全対策は二重、三重になされなければならない」と訴えている。