笑顔はじける自転車教育法 デンマーク式「遊びながら学ぶ」 杉並区で首都圏初の体験会

渡辺聖子 (2019年7月3日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 自転車に最初に乗れた日のこと、覚えていますか? いま、自転車の乗り方をゲーム感覚で「遊びながら学ぶ」という子ども向けの教育法が注目されている。開発されたのは、国民の半数近くが通勤・通学に自転車を使うという「自転車大国」、北欧のデンマーク。首都圏で初の体験会が6月、東京都杉並区で開かれた。
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シャボン玉を追いかける=いずれも杉並区で(隈崎稔樹撮影)

片手でハンドルを握ってシャボン玉をキャッチ

 私立大宮幼稚園の園庭に、ヘルメットをかぶった4、5歳児の15人が集まった。指導者の「いくぞー!」の掛け声に、「おー!」と元気よく応え、ペダルのないキックバイクにまたがる。まずはシャボン玉を捕まえるゲームからだ。

 友達とぶつからないよう、足で地面を蹴ってシャボン玉を追いかけ、片手でハンドルを握ったままキャッチ。「いくつ捕まえた?」との問い掛けに、「10個!」「11個!」と楽しそうな声が響く。手で捕まえられるようになったら、片手にハエたたきを持って追いかけてみよう。

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円に沿って走りながら先生やスタッフが持ったタンバリンをたたく

楽器をたたく、バランスボールを避ける…だんだん難しく

 続いて先生やスタッフがタンバリンやカスタネットを持って円形になり、子どもたちは円に沿って走りながらたたいて音を鳴らす。その後も先生たちが振る大きな青い布の「波」の下をくぐったり、行く手を遮るように転がってくるバランスボールを避けたりと、ゲームの内容は少しずつ難しくなっていった。

 小一時間の体験を終えた子どもたちは「もっとやりたい!」と笑顔。普段から自転車に乗っているという白川柚花(ゆずは)ちゃん(4つ)も、この日初めて乗った小林奏瀬(かなせ)ちゃん(4つ)も、「シャボン玉が楽しかった」と声をそろえた。

自転車を体の一部に感じてほしい

 このデンマーク式自転車教育法では、さまざまな動きを取り入れたゲームを楽しみながら、子どもたちはバランスの取り方やハンドル操作、スピード調整のコツなどを自然に身に付けていく。体験会を企画した馬場誠さん(63)は「自転車を体の一部に感じてもらえるようにしたい」と話す。

先生たちが上下に振る布の「波」の下をタイミング良く走り抜ける

 馬場さんは、米国のスポーツ自転車・用品ブランド、スペシャライズド社の日本法人代表や、国内最大のスポーツ自転車専門店ワイズロードの運営会社代表を務めた。2016年からはフリーで自転車関連のプロジェクトを手掛け、デンマークサイクリスト連盟が開発したゲーム形式の教育法の普及にも力を入れる。

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転がってくるボールをタイミング良く避ける

デンマークでは2~12歳が体験

 デンマークは自転車専用道が整備され、自転車は通勤や通学の重要な足になっている。そのため幼いころから「正しい乗り方」を身に付けるための教育が盛んで、2~12歳向けのこのゲームも多くの未就学児や小学生が体験する。馬場さんによると、首都コペンハーゲンでは週に1度、ゲームの時間を設けている幼稚園もあるほどで、「公道に出る前にバランス感覚を養い、運転技術や危機管理能力を身に付けられるようになる」という。

 日本では、連盟の指導を受けた一般社団法人の市民自転車学校プロジェクト(大阪市)が、京都市など関西を中心に取り組んでいる。同プロジェクトの藤本典昭代表理事(62)は「日本の自転車教育は交通安全が先にくるが、正しい乗り方を学ぶことと、交通安全を学ぶことは違う。この手法が理解されて全国に広まってほしい」と語る。

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笑顔で子どもたちに話し掛ける馬場誠さん

 馬場さんは今後、首都圏の幼稚園などでも広めていく予定だ。問い合わせは馬場さんのメールへ。NPO法人自転車活用推進研究会のサイトでは、デンマークサイクリスト連盟発行のマニュアル(日本語版)も公開している。

自転車大国デンマーク 

 首都コペンハーゲンでは100年ほど前から市民や政治家らが自転車に着目し、先進都市を目指して街づくりを進めてきた。九州とほぼ同じ面積の約4.3万平方キロの国内には現在、1万2000キロ以上の自転車専用道路が整備され、自転車専用の信号機もある。健康的で環境に優しい生活の観点からも、世界の注目を集めている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年7月3日

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