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ずさんな企業主導型保育 どこにいくら助成金を払ったか、内閣府は「知りません」 報告書は総額だけ

(2019年8月6日付 東京新聞朝刊)
 政府が待機児童対策の目玉として導入した「企業主導型保育事業」で、所管する内閣府が、助成金をどの事業者へいくら支出したのか、把握していないことが分かった。内閣府の担当者は取材に「事業の委託先が確認している」として報告を受けていないことを認めた。この事業は本年度の予算額が2000億円に上るが、ずさんな計画で開所できないケースや助成金を狙った詐欺事件も起きており、国の公金を扱う姿勢が問われそうだ。

行政文書不開示決定通知書に書かれた不開示理由

委託先の「児童育成協会」任せ…事業者名と個別の金額は記載なし

 企業主導型保育事業は、企業から集めた「事業主拠出金」を原資に2016年、民間で5万人分の保育の受け皿をつくってもらおうと政府が導入した。認可保育所並みに、整備費の4分3を上限に助成する。所管は内閣府だが、保育所を開く事業者の審査や助成金額の決定、支給など一連の実務は公益財団法人「児童育成協会」(東京都渋谷区)に委託している。

 協会は毎年度、内閣府へ「実績報告書」を提出しており、それによると16年度は総額で約194億円、17年度は約808億円が主に助成金として支出された。しかし、報告書には、個々の助成先事業者名や金額は記載されていない。

「内閣府として、個々の助成金額など細部まで報告は求めていない」

 東京新聞は5月、内閣府に対し、事業開始からこれまでに助成した事業者名とそれぞれの金額が分かる資料の開示を請求。同府は7月12日付で「不開示」とし、理由を「作成・取得しておらず、保有していない」と説明した。担当者は「助成先や金額の妥当性は、児童育成協会が確認している。内閣府として全事業者の個々の助成金額など細部まで報告は求めていない」と話した。

 協会は報告書と別に、ホームページで16、17年度の助成先名は公開しているが、それぞれへの助成額は記載していない。

 公費支出の実務を国が他団体に委託する例は他省庁にもある。文部科学省は私立大学への補助金交付事業を「日本私立学校振興・共済事業団」へ委託しているが、交付した大学名や金額は報告させている。

CG

定員割れ、詐欺… 会計検査院も問題視「助成金審査が不十分」

 企業主導型保育事業を巡っては、大幅な定員割れや、開設に至らない施設があるなどの問題が相次いで発覚。7月には、助成金約2億円をだまし取ったとして、福岡市の会社社長ら2人が逮捕され、審査の甘さが露呈した。内閣府の有識者検討委員会は3月、新設要件を厳格化するなど制度見直し案をまとめたが、国が助成先を把握することには触れていない。4月には会計検査院が「助成金審査が不十分」として内閣府に改善を求めた。

 助成金の財源である拠出金は、法律で企業に負担が義務付けられている。企業が厚生年金保険に加入する従業員の人数に応じて納め、国の「年金特別会計子ども・子育て支援勘定」へ入る。もともと児童手当や学童保育などの子育て支援分野に使われていたが、国は企業主導型保育事業にも使えるよう法改正し、毎年、拠出金率を引き上げている。

「政権の責任感に緩み」新藤宗幸・千葉大名誉教授の話

 児童育成協会を監督する立場の内閣府が、個々の助成実績を把握していないのはありえない話で驚いた。どこに、いくら、なぜ助成したかは事業の効果や公費の透明性を確保する上で基本だ。事業設計自体に問題がある。助成実績を把握できなければ恣意(しい)的な運用があっても防げず、次年度の予算も適切に組めない。安倍政権の政策や予算に対する綱紀、責任感が緩みきっているのではないか。

企業主導型保育事業とは 

 主に企業の従業員の子どもが利用する認可外保育施設の整備費や運営費を国が助成する制度。自治体の審査と認可が不要ながら認可施設並みの助成を受けられるため、迅速に整備でき、企業イメージも向上するとして広がった。今年3月現在で3817施設、定員8万6354人分に助成が決定。2020年度末までに計11万人分の受け皿を整備する目標で、本年度予算は2016億円。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年8月6日