東京都が18歳以下の子どもに月5000円給付 所得制限なし、少子化対策で新年度から 第2子保育料の無償化も検討

三宅千智、鈴鹿雄大 (2023年1月5日付 東京新聞朝刊)
 東京都の小池百合子知事は4日、都庁での新年のあいさつで、少子化対策として新年度から、都内に住むゼロ~18歳の子ども1人に月5000円を給付する方針を明らかにした。養育する人の所得制限は設けず、関連経費約1200億円を2023年度当初予算案に計上する見通し。

表 子育てを巡る主な手当(月額)

小池知事が国の少子化対策を批判

 小池知事は、2022年の全国の出生数が統計開始以来初めて80万人を下回る可能性となったことに触れ「社会の存立基盤を揺るがす衝撃的な事態だ」と指摘。少子化対策は国策として取り組むべき課題としながらも「国の来年度予算案では、ただちに少子化から脱却して反転攻勢に出るぞという勢いになっていない」と批判し、都が先駆けて着手すると強調した。

 ただ、実際に給付するには区市町村との調整が必要で、新年度初めからの実施は難しい。都幹部は「新年度のできるだけ早い時期から始めたい」としている。

子どもを持たない理由は「お金」

 住民基本台帳によると、東京都内のゼロ~18歳の人口は2022年1月時点で約193万7000人。全員に月5000円を給付すると、年間約1200億円が必要となる。来年度の一般会計当初予算は、過去最高だった2022年度の7兆8010億円を上回る見込み。

 都の合計特殊出生率は2021年に1.08で、全国の1.30を下回っている。国立社会保障・人口問題研究所の調査(2021年)によると、夫婦が望む理想の子ども数の平均は2.25人となっており、子どもを持たない理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が最多だった。

 また、都は都内の世帯における「第2子」を対象にした保育料無償化の検討も始めた。都内の保育料は認可保育所や認定こども園の平均で月額3万円以上で、第3子以降は無料となっている。都は国の補助制度と合わせて第2子の保育料も無料になる仕組みを検討している。

児童手当が適用されない層をカバーできるが…「ばらまき」の懸念も

 東京都が打ち出した新たな子育て支援策は、国の児童手当が適用されない16歳以上や高所得世帯をカバーする。全国に類を見ない独自策で少子化に歯止めをかける狙いだが、一律の手当には「ばらまき」の懸念もある。

千代田区でも18歳以下に月5000円

 国の児童手当はゼロ~2歳は1万5000円、3歳から小学校卒業までは1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は1万円。扶養親族が3人の場合、保護者のうち、高い方の所得が736万円未満なら受給対象となる。児童手当の対象外の世帯に向けた特例給付では、扶養親族3人で所得972万円未満なら5000円を受け取れる。

 東京都千代田区は、児童手当の対象とならない中学卒業後から18歳までの子どもや、高所得世帯の中学生以下の子どもにも月5000円を給付している。

若い世代の所得を上げる対策も必要

 小池百合子知事は4日、報道陣に「子どもは生まれ育つ家庭にかかわらず等しく教育の機会、育ちの支援を受けるべきだ」と、所得制限を設けない理由を説明した。約1200億円の財源は他の事業の見直しで捻出できるとして「(これは)未来への投資。ばらまきという批判にはまったく当たらない」と述べた。

 愛知大の後(うしろ)房雄教授(行政学)は「対象を選別する手間や経費を考えると、所得制限を設けないことは妥当で、子育て支援という明確なメッセージとして評価できる」と話す。その一方で「出生率を念頭に置くなら、子どもが生まれた後だけでなく未婚率も考える必要がある。また、若い世代の所得を引き上げる取り組みなどもないと、ただのばらまきで『東京は金があるからできる』となってしまう」と指摘した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年1月5日

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