<記者の視点>政府の子育て支援策は「都市部の大企業で働く正社員」に偏っていないか

鈴木穣 (2023年2月22日付 東京新聞朝刊)

写真 肩車する親子

育休取得率が高いのは大きい事業所

 2000年代後半から政府の子育て支援策の動向を取材しているが、ずっと同じ思いが頭から離れない。

 想定している支援の対象者が「都市部の大企業でフルタイムで働く既婚の正社員」に偏っていないかとの疑問だ。

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論説委員 鈴木穣

 例えば、育児休業は確かに制度整備が進んできた。休業期間が延び、休業給付も生活を支えるために増額されている。父親が取得しやすい制度改正も最近行われた。

 雇用均等基本調査によると出産した女性従業員と、配偶者が出産した男性従業員の育休取得率は、いずれも事業所規模が大きいほど高い傾向にある。中小零細企業より人材と経営に余裕がある分、制度を使いやすいからだろう。

 自営業者には育休制度はない。非正規雇用者だと育休を望んでも解雇が怖くて利用しにくい事情がある。

 保育所は、安倍晋三政権が「待機児童ゼロ」を掲げ整備が進められた。確かに、待機児童数は減少傾向にはなったが、そもそも長時間働く正社員家庭が保育の必要度が高くなりがちで優先的に入所できるケースが多い。

 働き方が多様化している時代だ。非正規雇用者や自営業者への支援拡充の議論は急がねばならない。

中小企業では有休も取りにくいのに

 その一方で、見落とされている課題がある。中小零細企業で働く人には、正社員だとしても支援策が十分に行き渡っていないとの思いが強い。

 小さな事業所の労務管理を支援する知人の特定社会保険労務士は「一般的に中小零細企業の従業員から寄せられる労働相談には、有給休暇を取らせてもらえないとの訴えが多い」と指摘する。

 有休の取得は働く人の権利だが「働かない日の賃金をなぜ払わなければならないのかとの思いが強い経営者もいて、なかなか有休の意義を理解してもらえない」とも。

 もちろん多くの中小零細企業は厳しい経営環境の中で働きやすい職場づくりにも取り組んでいる。

 だが、有休も満足に取れない職場だとしたら、長期間休むことになる育休を気兼ねなく取れるだろうか。それ以前に、出産や結婚をあきらめてしまうかもしれない。

 職場環境改善に労働組合の力を頼るにも、労組の推定組織率は従業員1000人以上規模企業の39.6%に対し、同百人未満企業だと0.8%とほぼないに等しい。

 どんなに支援策を講じても、必要な人に届かなければ役に立たない。さまざまな制度を拡充したと政府に胸を張られても、むなしく響く。

 働きやすい職場づくりは、賃上げだけでは不十分だ。厳しい経営状況を改善する経営支援や、働きやすい職場に転職できるよう人材教育を拡充する知恵を絞りたい。

 少子化対策が今国会で焦点となっているが、どんな働き手にも確実に届く実効性ある支援策を考えねば、少子化は克服できない。

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