子どもの貧困改善へ数値目標を決めよう 超党派の法改正案の原案が判明 「景気で左右される」と慎重論も

上坂修子 (2019年4月13日付 東京新聞朝刊)
子どものあした
 親から子どもへの「貧困の連鎖」を断ち切るため6年前に成立した「子どもの貧困対策推進法」を巡り、超党派の議員連盟が検討している改正案の原案が明らかになった。子どもの貧困率を改善する具体的な数値目標を、大綱で定めるよう明記したことが柱。今国会への提出、成立を目指す。実現すれば子どもの貧困解消への推進力となるが、慎重論も残っている。

貧困率、改善したけれど依然「7人に1人」

 子どもの貧困率は、平均的な年間可処分所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合。最新のデータは2015年の13.9%で、前回調査(12年)の16.3%からやや改善したが、依然として子どもの7人に1人が貧困状態にある。

 13年6月に推進法が成立した際、子どもの貧困率について数値目標を明記すべきだとの声が強かったが、財源の不安などから見送られた。推進法は施行から5年後に見直すことになっている。超党派の「子どもの貧困対策推進議連」(会長・田村憲久元厚生労働相)が昨年12月から議論する中で「今回はぜひ(数値目標を)入れてほしい」との声が出ていた。

 原案では、法改正後に政府が閣議決定する大綱で、子どもの貧困率や、ひとり親世帯の貧困率に「改善目標」を定めるよう明記。現行法は「改善に向けた施策」を大綱で定めるとしているだけで、数値目標の明示まで求めていない。

自民党内に慎重論「数値は景気に左右される」

 議連は15日の総会で、原案を基に議論する。自民党内には「子どもの貧困率は景気によっても左右される」(閣僚経験者)と、数値目標の明記に慎重な声があり、修正される可能性もある。

 原案ではこのほか、子どもの貧困は個人の問題ではなく、社会的な背景があることを踏まえて取り組むよう求める規定も加えた。貧困対策では子どもの意見を尊重し、貧困世帯の当事者も加わる「子どもの貧困対策推進協議会」を設けて首相が意見を聴くとした。

 都道府県に子どもの貧困対策に関する計画の策定と公表を義務付け、市区町村にも計画策定の努力義務を課した。国と自治体に「所得の再分配を強化」することも求めた。

「貧困の連鎖」断ち切る鍵 当事者や支援団体も切望

 子どもの貧困対策推進法改正案の原案が、大綱に明記するよう求めた子どもの貧困率などの数値目標は、経済的に苦しい家庭の当事者や支援団体が強く求めてきた。「貧困の連鎖」を断ち切る鍵とも言える。

 推進法が成立したのは、2009年の子どもの貧困率が過去最悪の15.7%に達し、子どもの6人に1人が貧困という現実に衝撃が広がったことが発端だった。しかし政府・与党は「資産などが勘案されておらず、実態を反映していない数字」と主張。推進法に基づいて閣議決定された現行の大綱には、数値目標はおろか、ひとり親世帯への児童扶養手当の増額なども盛り込まれず、実効性に乏しいと批判された。

 その結果、返済不要の給付型奨学金など教育支援は一定程度進んだが、貧困世帯への経済的な支援は不十分と専門家から指摘されている。

 厚生労働省の調査によると、15年のひとり親世帯の貧困率は50.8%と、先進国でも高水準。数値目標を明記しなかったことが一因に違いない。

 今回の推進法改正で数値目標を設定すれば、政府には達成する責任が生じる。予算を組んで具体的な施策を進めさせる根拠となる。

 自民党には慎重論があるが、貧困状態にある当事者らの声にいま一度耳を傾け、決断すべきだ。

子どもの貧困対策推進法改正案(原案)のポイント

・子どもの貧困率、ひとり親世帯の貧困率などの改善目標を大綱で定めるよう明記

・都道府県に、子どもの貧困対策計画作成を義務づけ。市区町村にも計画作成の努力義務

・安定雇用の促進など保護者への支援を強化

・当事者や学識者による対策推進協議会を設置

・貧困対策で子どもの意見を尊重。貧困は個人的問題でなく社会的背景があることを踏まえて取り組む

所得の再分配を強化

子どもの貧困対策推進法

 子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されないよう、国や自治体の責務を定めた法律。議員立法で提出され、2013年6月に全会一致で成立。14年1月施行。同法に基づく「子供の貧困対策大綱」が同年8月に閣議決定された。

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