来夏は親子で富士山に登ろう! 今からできる「練習登山」のポイントとは

五十住和樹 (2019年9月13日付 東京新聞朝刊)
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矢野さん率いる親子登山の参加者たち。富士山を望む宝永山山頂で絶景に万歳

 標高3,776メートルを誇り、日本一高い富士山。世界文化遺産にも登録され、登山者にとっては憧れの山だ。今季は10日で閉山したが、「来年は親子で一緒に登りたい」と夢見る人もいるのでは? 心構えや訓練など今からできる準備を紹介する。 

「練習登山」重ね、親子で山頂目指す

 8月中旬、富士山5合目に4つある登山口の1つ、標高2400メートルの富士宮口。午前9時すぎに集まったのは小学3年から中学3年の男女7人とその親ら計14人だ。30分ほど付近を歩くなどして山の空気に体を慣れさせた後、山頂を目指し歩きだした。

 子ども7人のうち3人は初めての富士登山。この日に向け、東京近郊に位置する599メートルの高尾山などで「練習登山」を重ねてきたという。一行は7合5尺にある山小屋で1泊。翌日午前4時ごろ、無事、山頂にたどり着いた。御来光を拝んだ子どもたちの笑顔は、達成感に満ちていた。

宝永火口で休憩。ガイドの矢野政人さん(左から3番目)は「この秋から練習登山を」と呼び掛ける

来年3月までにコンパクトな山に3回ほど登ろう

 富士山の頂上までの標高差は、最も少ない富士宮口からでも約1400メートル。一行を率いた日本山岳ガイド協会認定登山ガイド、矢野政人さん(48)は「来年の富士登山を目指すなら、この秋から練習登山を始めて」と呼び掛ける。まずは、標高差が400メートル程度のコンパクトな山から挑戦するのがいい。目安は来年3月までに3回ほど。7月の開山に備え、4~6月の3カ月間は標高差700~1000メートルの山に2回ほど登っておこう。

 いずれも日帰りができる山でOKだが、気を付けたいのは本番と同じ装備で登ること。登山靴を履くことはもちろん、長袖、長ズボン、雨具、肌が弱い子なら日焼け止めも忘れてはいけない。富士山の登山道は火山特有の砂礫(されき)道のため、靴に小石が入らないよう、かかとまでを覆うスパッツも必要だ。装備を整えた上で山頂までたどり着く経験を重ねれば自信がつく。

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こまめな栄養補給の訓練も

 こまめに食べたり飲んだりすることに慣れるのも、子どもにとっては大事。登山中は基本的に歩きっぱなしで、普段のように決まった時間に食事が取れない。休憩の際にはできるだけ口に物を入れ、体力を回復させたい。加えて、疲れた時でも食べられるものを見つけておくと役に立つ。

 富士山は標高が高く、酸素が薄い。高山病の危険に備えた準備も必要となる。疲れて呼吸が浅くなると、症状が出やすいため、呼吸法を練習しながら登るといい。息を出し切ることを意識するのがポイント。そうすれば、吸う時に酸素が多く入ってくる。

山では親子は対等、相棒です

 練習登山の際、親は子どもをよく観察しよう。調子のよい時、飽きた時、疲れた時…。子どもがどんな反応や変化を示すかを知っておくと、本番でも対応しやすい。万が一、子どもが疲れて荷物を持てなくなった時、自分が代わりに背負って歩ける体力があるかどうかも確認。なければしっかり鍛える必要がある。

 成功の鍵は、親も子どもに戻って満喫することだ。子どもが珍しい花や虫を見つけてしゃがみこんでも、せかさず一緒に眺めよう。子どもがぐずっては元も子もない。歩き疲れた時にはやる気が出るまで黙って待ち、目を合わせて励ますことも力になる。

 矢野さんは6年前、当時5歳だった息子と富士山登山に成功。以降、毎年親子で登っている。登山道は狭く手をつなぐことはできない▽対向の人とすれ違う際は登りの人が優先-などマナーもしっかり教えて臨んだという。「山では親子は対等、相棒。指示はできるだけしないように」とアドバイス。「子どもが一歩一歩進む大切さを学び、自信を深めていく過程を共にできるのが親の喜びです」と登山の魅力を話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年9月13日

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