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「親の体罰禁止」法案が国会で議論へ 虐待防止へ一歩 罰則なし、定義があいまい…実効性は? 

坂田奈央、島袋良太 (2019年3月20日付 東京新聞朝刊)
 政府は19日、保護者らによる体罰禁止を盛り込んだ児童虐待防止法と児童福祉法の改正案を閣議決定し、衆院に提出した。東京都目黒区や千葉県野田市で起きたような虐待死を根絶するため、体罰禁止を明記し、児童相談所(児相)の体制強化を打ち出したのが特徴だ。一歩前進には違いないが、体罰の定義があいまいで罰則もないなど、実効性の点で課題を残している。

国会議員から「電車で泣く子の腕をつかむ、おしりをたたくは体罰?」との声も

 改正案は、親などが「しつけ」と称して子どもに体罰を加えてはならないことを明記。親権者が必要範囲内で子どもを懲戒できる規定が民法にあることから、これまで法律上、体罰禁止に踏み込んでこなかった。

 ただ、体罰が具体的に何を指すのかは不明確。「電車内で泣く子どもに『静かにしなさい』と腕をつかんだり、おしりをたたいたりするのも体罰と言うのか」(自民党の厚生労働相経験者)など、線引きは難しい。厚労省が作成するガイドラインに議論を委ねた。

 体罰を加えた場合の罰則も見送られた。「何が体罰かはっきりしない中で、罰則を設けるのは難しい」(同)という理由。自民党が改正案を事前審査した際も、罰則はまったく議論されなかったという。

図解 児童福祉法・児童虐待防止法 改正案のポイント

 さらに、改正案は、体罰の主体は「親権者」や「児童福祉施設の長等」にとどまり、親の交際相手など親権を持たない同居人は対象外。「第三者が暴力をふるえば暴行罪や傷害罪に当たる」(厚労省の担当者)という理屈だが、「何人(なんぴと)によらず、あらゆる体罰を禁止するというメッセージに欠ける」(別の厚労相経験者)との不満も。

東京23区と中核市への児相設置義務化は先送り

 親や子どもにとって身近な相談窓口である児相を巡っては、中核市と東京23区にも設置を義務づけるかどうかについて、議論がまとまらなかった。

 現行では、都道府県と政令市に児相の設置義務がある。中核市54市と東京23区のうち、金沢市と神奈川県横須賀市だけに市営の児相がある。自民党内では、すべての中核市と東京23区に設置すべきだとの意見が出たが、中核市市長会などが財政負担の増大を理由に反発した。

 結局、改正案には、施行後5年をめどに設置できるよう、施設整備や人材確保で政府が支援すると付則に入れただけ。4月の統一地方選や夏の参院選に向け、地方政界の反発を避けたい心理も働いたとみられる。

DV対策との連携もカギ

 改正案は、ドメスティックバイオレンス(DV)対策機関との連携も打ち出した。児童虐待の早期発見を求める施設として、現行の児童福祉施設や学校だけでなく、DV相談支援センターを加える。厚労省の担当者は「虐待を発見しやすい立場にあることを自覚してもらう」と説明する。

 ただ、DV問題に詳しい戒能(かいのう)民江・お茶の水女子大名誉教授は、政府が過去にまとめたDV被害者保護の基本方針でも、DV相談支援センターから児相などへの通告を明記したが「機能してこなかった」と指摘。保護が必要な子どもの発見や相談を担う婦人相談員を、自治体が設置する「要保護児童対策地域協議会」のメンバーにするなど「日常から情報共有を図れる体制」づくりを訴える。

 政府の改正案に対し、野党は対案を提出する構え。国会論戦では実効性が一つのポイントとなりそうだ。