重大な児童虐待の危機感、関係機関で共有されず 東京都が2件の検証報告書を公表

(2019年10月25日付 東京新聞朝刊)
 東京都は2016年度に都内で起きた重大な児童虐待事件のうち、都や区市町村の機関が相談などで関わった2件を検証し、改善策をまとめた報告書を公表した。関係機関の連携不足や、リスク認識の不十分さが子どもの死亡につながったと指摘。情報共有や支援対象の状況評価で改善点を挙げた。

両親の深夜外出中、1歳の子が風呂でおぼれる

 報告書は、社会的に影響の大きい事件の検証など、都として他の作業を優先することなどがあり、年度によって発表時期にばらつきがある。今回は2017年度の報告書を発表した。それなどによると、1件は、2016年12月、20代夫婦が子ども4人を置いて深夜に外出中、1歳の第4子が風呂でおぼれ、重度の障害が残った件。

 2011年に市の子ども家庭支援センターが、他のきょうだいの養育状況を見て虐待(ネグレクト)として受理。児童相談所も関わっていたが、養育環境が改善したとして2016年3月に指導を終了。

保育所は危機感持っていたのに、支援進まず

 家族は翌月転居し、転居先の子ども家庭支援センターが情報提供を受けて「養育困難」と受理したが、支援が進まないまま事件に至った。

 改善策として、転居前にきょうだいが通っていた保育所は危機感を持っていたのに共有されなかったとして、危機感が最も高い機関の情報を重視することや、関係者が支援策などを話し合う要保護児童対策地域協議会を定期的に開くことなどを指摘した。

うつ病既往歴の母親 生後2カ月の長男を絞殺

 もう1件は2017年3月、都外に住むうつ病の既往歴のある30代の母親が、都内に子どもを連れて里帰り中、生後2カ月の長男の首を絞めて死亡させた件。母親が住んでいる市の保健機関は、里帰り先の保健機関に新生児の訪問を依頼した。市の保健機関は、母親から育児不安の訴えを受けていたが、虐待リスクが高いとまでは認識せず、里帰り先の保健機関も連絡が取れなかった。母親が全国児童相談所共通ダイヤル「189」に電話して「子どもをかわいいと思えず悲しい」などと訴えた5日後に事件が起きた。

 改善策として、精神的に不安定な妊婦は支援が必要な特定妊婦であると認識し、里帰り先の機関は「自分たちの管轄内に支援が必要な母子がいる」との意識を持ち、子育て支援サービスを柔軟に運用することなどを挙げた。

 報告書は、大学教授や小児科医らでつくる都児童福祉審議会検証部会が関係機関へ聞き取りするなどしてまとめた。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年10月25日

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