離婚後の子どもを支えるには? 「あなたのせいじゃないよ」とLINEで寄り添うNPO、踏み込んだ支援を行う「公」も

長田真由美 (2024年4月3、4日付 東京新聞朝刊)
 離婚後の子どもの養育をどうするか。3年にわたった法制審議会(法相の諮問機関)の議論が取りまとめられ、今国会で民法改正案が審議されている。共同親権に焦点が当たっているが、どんな状況でも子どもの気持ちに寄り添うことが重要だ。「子ども」を第一に考える支援の現場を訪ねた。

「自分がいなければ…」相次ぐLINE相談

 「今、お父さんとお母さんがけんかしてて居場所がない」「相談する相手が周りにいない」

 離婚や別居など家庭環境に悩む子どもの支援をするNPO法人ウィーズ(千葉県鎌ケ谷市)には、こうした相談が無料通信アプリのLINE(ライン)で寄せられる。その数は月に約6000件。約100人の支援員が24時間365日、対応に当たる。

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ウィーズが手がけるラインの無料相談。かつて親の離婚で悩んだ大人も相談できる

 「親同士が悪口を言い合ったり、口をきかなかったり。支援で携わる子たちは、親が仲良くない状態を見てきたケースがすごく多い」と代表の光本歩さんが話す。その結果、「自分がいなければけんかしなかった」「自分は生まれない方が良かった」と心の傷を負う。そうした子が思いを吐露できるのが、ラインによる相談の場だ。

 ウィーズが志すのは、「子どものための支援」だ。子どもにとっては、離婚しても2人が親であることは変わらない。「相手の悪口を聞くことは、自分の半分を否定されていると感じてしまう」と光本さん。「一緒にいられなくなったのは、あなたのせいじゃないと伝えてほしい」と語る。

 過去に親が離婚した大人も相談にくるが、「40、50歳になっても当時の傷を引きずっている人がいる。子ども時代にある程度折り合いをつけないと、生きづらさを抱え続ける」と指摘。「そのために、子どもが離れた親のことを知る面会交流(親子交流)は大事ではないか」と言う。

別居親を知ることで自分のルーツが分かる

 面会交流とは、離婚などで子どもと離れて暮らす父母の一方が、定期的に子どもと会ったり、電話や手紙などの方法で交流すること。民法で、子の利益を最も優先して実施することが定められている。厚生労働省の2021年度の調査では、面会交流を実施しているのは母子家庭で30%、父子家庭で48%と低く、取り決めすらしていない親も多い。

 ウィーズは、子どもの気持ちに添った面会交流の支援をする。交流に付き添ったり連絡のやりとりをしたりするほか、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)で直接会うことが認められていない場合は、プレゼントや手紙を仲介する。

 「別居親を知ることで、自分は何者なのか、自分のルーツが分かる」と光本さん。アイデンティティーを確立し、等身大で親を見ることができる一助になる。「『親も自分と同じ人間で、違う人生があるんだ』と切り分けて考えられるようになる。自分にも価値があると思えることにつながる」と言う。

 光本さん自身も中学生時代、母の金銭トラブルで父と妹の3人で夜逃げした。4カ月間、中学校に行けない時期があり、「学校の先生になりたい」という夢が遠ざかった。教育委員会の計らいで中学に通え、進学先の高校では同じような境遇の教師に出会い、再び夢を持てた。

 「私は本当に運が良かった。でも、『支えてくれる大人に、偶然出会えた』という運任せの状況を変える必要がある。地域で子どもを見守る仕組みが必要ではないか」とし、「親の選択によって、子どもが夢や希望が持てなくなる社会は絶対におかしい」と力を込める。

すべての子に「栄養=養育費」と「愛情=面会交流」を 明石市が全国の先駆けに

 すべての子どもに、栄養と愛情を-。兵庫県明石市の子ども施策に貫く理念だ。離婚でいえば、栄養は養育費、愛情は面会交流(親子交流)。日本ではタブー視されがちな「離婚」に、明石市は全国に先駆けて関わってきた。

泉房穂さんの市長時代に推進

 10年前、離婚は「民」同士の問題で、「公」は介入すべきではないというのが一般的な考え方だった。ただ、「本当に生活に困って、助けを求めている人に力を貸さない理由にはならない」と市政策局市民相談室の相談担当課長(取材時)、牧田裕美さんは言う。

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離婚後の子どもの養育について記す合意書と養育プランの用紙=兵庫県明石市で

 2011年、子育て施策に熱心な泉房穂さん(前市長)が市長に就任し、行政が大きく動き出した。離婚や別居で両親が対立している中、子どもの立場に立ち、成長を応援するための支援が必要だと考えたからだ。

 当時は、養育費や面会交流を取り決めずに離婚しているケースが多かった。そこで、養育費の金額や支払日、期間、面会交流の頻度や場所、連絡方法などが書き込める合意書を作成。離婚届の書類を受け取りにきた人に手渡すことにした。「市役所からの書類に入っていたら、『必要なことなのか』と養育費や面会交流のやりとりをするきっかけになるかもしれない」と牧田さんは言う。

養育費の立て替え、回収まで

 明石市は10年かけて、こうした子ども養育支援事業を広げてきた。面会交流の支援のほか、親の離婚で子どもがどんな気持ちでいるか、パンフレットもつくった。なかでも養育費は、不払いによる泣き寝入りを救済しようと、「取り決め」「立て替え」「差し押さえ」のさまざまな段階で関わる。

 例えば、不払いが発生した場合、公正証書など公的な取り決めをしている人を対象に、月額5万円までを3カ月間、立て替える。立て替え分は市が直接、養育費を支払う側に催促する。利用する側に所得制限などの条件はない。

 市の取り組みは、全国にも広がりつつある。16年には法務省が明石市の書式を参考に、「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」を作成した。近年、民間の保証会社による養育費の「立て替え」も広がる。利用するには、受け取る側の親が保証料を支払う必要があるが、保証会社が立て替えた上、回収してくれる。

 子どもの気持ちに寄り添った支援とは-。今後の国会審議で議論がどこまで深まるのか、注目される。

表 民法などの改正案のポイント

子どもの声を届ける「代理人」制度 普及はまだまだ

 今後、政府案通りに民法が改正されたら、離婚後の親権のあり方で合意できなかった時など、家庭裁判所の判断が問われることが増えそうだ。そうしたとき、子どもの声を裁判所に届ける「子どもの手続代理人」という制度がある。

 2013年に家事事件手続法が施行され、親権者変更や面会交流など家裁の調停・審判に、子ども自身が参加できるようになった。その時、子どもが意見を表明するために、父母の代理人と同じように、弁護士に「子どもの手続代理人」になってもらうことができる。家裁調査官が子どもの意見表明を支援してくれると思われがちだが、調査官は事実を調査する役目で、父母や子いずれとも中立に接するので、立場が異なる。

 ただ、制度の普及は進んでいない。最高裁判所によると、利用した未成年者数は2023年に39人。2013年以降の累計でも346人と少ない。一方、面会交流調停申し立てだけでも、年間1万件を超えているのが現状だ。

 経済的事情で弁護士費用の負担が難しい場合は、日弁連の「子どもに対する法律援助」制度も利用できる。日弁連子どもの権利委員会の委員で弁護士の池田清貴さんは「親権者変更など子どもに影響が大きいケースは、制度を活用してもよいのではないか。子どものための制度であることに、理解が進めば」と期待する。

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