新型コロナ対策、なぜ子どもや女性にしわ寄せが? 川崎市の武井由起子弁護士「政治に生活者目線がない」

山本哲正 (2020年3月8日付 東京新聞朝刊)
 新型コロナウイルスをめぐり、学校現場や家庭は一斉休校の「政治判断」に振り回されている。川崎市在住の弁護士武井由起子さんは、生活者目線のない政治が、この混乱の一端にあるという。3月8日は国連が制定した「国際女性デー」。女性の平等な社会参加を考える日に合わせ、「女性や子どもにしわ寄せがいくのはなぜかを考えませんか?」と呼び掛ける。 
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政治の意思決定に生活者目線が大切だと話す武井由起子さん

「生活体験のない人が決めた結果」 

 「生活体験のない人が決めた結果がこれです。まさにてんやわんや」

 2月27日夕に安倍晋三首相が突然表明した「一斉休校要請」という政治判断について、武井さんはこう切り出した。専門家が諮問も提言もしていないという対策に、全国の自治体や家庭が振り回された。川崎市も4日から市立小中学校の休校に踏み切っている。

 「医療崩壊させないことが大事なはずだが、看護師は9割が女性。小さいお子さんをお持ちの方もいる」と指摘する。子どもが心配で働けなくなる看護師が出てくる可能性に「意思決定する人たちの誰も気付かなかったか、異を唱えなかったのか」。

台湾は38歳のデジタル担当大臣が

 ウイルス対策で女性や子どもへのしわ寄せが本当に必要なのかも知りたいのに、同29日の安倍晋三首相の会見は質問を十分に受けず、説明らしい説明もしていない。納得のいかなさに拍車をかけたという。

 武井さんは、対照的なのが台湾の対策という。同様にマスク不足に陥ったが、デジタル担当の閣僚が台湾全土のマスクの在庫データをネット上に公開して、在庫確認アプリの開発に結び付けた。「女性の総統が前に出て早め早めの対策を打ち、38歳でトランスジェンダーのデジタル担当大臣が、国民の不安に寄り添った。社会的な不安も落ち着き、政権支持率が上がっている」

 逆に日本政府の対応は後手後手。武井さんは「現在の混乱は『政治の失敗』です」と言い切る。「根底にあるのは、私たちの無関心。政治が国民生活とかけ離れているのは、私たちの側に立つ人を選んでいないから」と分析する。意思決定に女性など生活者目線が足りない弊害は思う以上に大きい。「政治参加は自分自身の安全保障の問題です」と説く。

行政の管理職も女性比率を上げたい

 武井さんは川崎市議会を傍聴した際、市側の席はほぼ全員男性だったことに驚いたという。市議の女性比率25%を「ほかと比べれば高めで、住民意識を反映する」とし「市の管理職登用も住民意識に追いつかなければ」と注文をつけた。

 世界経済フォーラムの2019年版の男女格差報告で、日本は前年の110位から121位にまで後退した。「女性に優しい社会は誰にでも優しい社会。恩恵は男性のパートナーや子どもだけでなく男性自身も受けます」。格差が広がる社会は誰にとっても生きにくい。武井さんは「今回のウイルス対策のようなことを考えれば、国会議員こそ生活者目線で選ぶことが大切です」

市議の女性比率 政令市のトップは川崎市で25.4%

 川崎市議の女性比率は6日現在で25.4%だ。2019年4月の統一地方選で議員選が行われた17の市町議会では葉山町、山北町(いずれも35.7%)などに続いて同率5位だったが、政令指定都市では相模原市(21.7%)、横浜市(18.6%)を上回りトップだった。

 男女の候補者数を均等にする努力義務を政党に課す「政治分野の男女共同参画推進法」が2018年5月に成立したが、この統一選で神奈川県議の女性比率は18.1%。国会の現状は衆院議員が9.9%(2月19日現在)、参院議員は22.9%(3月5日現在)にとどまっている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年3月8日

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  • 匿名 says:

    趣旨は分かるが、大事なことは、生活者としての経験があるかないかであり、男と女という方にワープしてはならない。生活者目線の欠けた女性も増えて来ている。

      

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