「仲が良かった」中2が同級生を刺殺 所沢市の事件 一線を超えた理由は
「『教科書隠し』問い詰めたら否定され、けんかに」
2人を知る同級生の女子生徒(13)は「いつも一緒にいるイメージだったのに」と、驚きを隠せない。校長によると、2人は同じ小学校出身。ともにおとなしい性格で中学では卓球部に所属し、2年で同じクラスになって一緒にいる時間が増えた。事件当日の5日も普段通りに登校し、2人が廊下で話す様子を同級生が見ている。
県警によると、少年は調べに対し、以前から見当たらなくなっていた教科書について「『隠した』と問い詰めたら否定され、けんかになった」と供述。県警は口論から、突発的に台所から包丁を持ち出して刺したとみている。
真面目な子ほど、ストレスの吐き出し方分からない
少年の犯罪心理に詳しい碓井真史(うすいまふみ)・新潟青陵大大学院教授は「真面目な子ほど、ストレスの吐き出し方が分からない。その点に関して本人や周囲がうまく対応していれば、事件は起きなかったのでは」とみる。
所沢市教育委員会によると、少年は事件の1カ月ほど前、担任教師に「(本郷さんに)5月中旬から20回以上つねられている」と相談し、腕にはつねられた痕も確認された。ただ、相談の2日後に少年が「『もうやらない』と言われたので大丈夫」と話したため、学校は本郷さんに指導しなかった。市教委は、いじめの有無などを第三者委員会を設置して調べる方針だ。
非行の相談員「学校や家庭で『成績や進学先が重要』」
元家裁調査官で、NPO法人非行克服支援センター相談員の伊藤由紀夫さんは「14歳はまだ子ども。大丈夫かどうかの見極めは難しい。もう少し詳しく2人から聞き取りをしても良かった」と指摘する。
伊藤さんは40年近く、非行少年に寄り添ってきた。最近は高齢化や核家族化で、子どもたちが親族らの葬式に出席する経験が少なく、人の死と向き合う機会が減っているとし「命の重みを感じにくくなっている」と危惧する。
今回の少年も「刺したらどうなるかまでは考えられなかったのではないか」と推測。「家庭や学校で、成績や進学先の方が重要とされ、交換がきかない命について、話し合う機会が薄れているのでは」と話す。
狭い世界の子どもたち SOS出せる雰囲気づくりを
県内では、2016年に東松山市で16歳の少年が知人の少年5人に暴行され死亡した事件を受け、18年度に小中高校の生徒指導の担当教諭が、生徒の様子に変化があったかなどに目を向け、適切な対応を学ぶ研修を始めたばかり。
今回の所沢の中学でも、同年度から「命を守るための教育プログラム」として、命を考える講演、新入生全員とスクールカウンセラーらとの面談などに取り組んできた。その直後に事件は起きた。
伊藤さんは「学校と家庭という狭い世界に身を置く子どもたちは、誤った解決策を正しいと思い込みやすい」と説明。「子どもが『もっとSOSを出してもいいんだ』と思える雰囲気を大人がつくることが必要だ」と話している。
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