子どもの「デジタル時間」は適切? フェイクニュースの発信者・受信者にならないためには? 京橋築地小でメディア教育 - 東京すくすく | 子どもとの日々を支える ― 東京新聞

子どもの「デジタル時間」は適切? フェイクニュースの発信者・受信者にならないためには? 京橋築地小でメディア教育

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フェイクニュースの広がる理由について学ぶ4年生の児童たち=いずれも東京都中央区の京橋築地小学校で

 デジタルデバイスやデジタルメディアとの付き合い方を考えるための授業が3日、東京都中央区立京橋築地小学校で行われた。参加した4年生の児童54人は、自分たちの「デジタル時間」をチェックしたり、複数の記事からフェイクニュースを探し出したりするワークショップなどを通じて、ゲームやスマートフォン(スマホ)の利用時間を検討し、ニュースを精査してフェイクニュースを見抜くヒントを学んだ。

子どもたちが学んだのは…

  • ゲームや動画視聴、スマホなどを使う「デジタル時間」の決め方
  • フェイクニュースが広まる理由
  • ネットの情報をうのみにせず、自分の力で情報の正誤を確かめる方法

 授業を行ったのは、キャリア教育プログラム「TERAKOYA Program」を手がけるイコールチャンス社(東京都中央区)。中央区教育委員会と連携して区内の各小学校のリクエストに応じたプログラムを提供している同社は、本年度は区内17小学校中の9校で人工知能(AI)や金融などについての授業を展開している。

 京橋築地小が選んだテーマは、デジタル技術によって社会に参加する能力や、その際の行動の善悪を自分で判断する力を身に付ける「デジタル・シチズンシップ」。「プライバシーとセキュリティー」「ネットいじめ」「デジタル足跡とアイデンティティー」「対人関係とコミュニケーション」など6つあるデジタル・シチズンシップの領域のうち、「メディアバランス」と「メディアリテラシー」の2項目を取り上げた。

1日の過ごし方をワークシートに書き出す児童

 前半の「メディアバランス」のプログラムでは、「昨日、何をしたか」を時間の流れに沿って書き出し、ゲームや動画視聴、スマホ利用などデジタルデバイスと接触した「デジタル時間」を割り出した。

 講師を務めた同社取締役の小川和紀さん(41)は「ネット依存やゲーム依存という言葉を聞いたことはありますか?」と問いかけ、「デジタル時間を取り過ぎると、そうなる危険性があると言われています」と解説。勉強時間とゲーム時間に関する研究で、「スマホ利用時間が4時間以上・勉強が2時間以上」のグループのテストの平均点は58点で、「スマホ利用時間が0時間(利用しない)・勉強30分以下」のグループの63点よりも低かったという結果を紹介した。

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勉強時間・スマホ時間とテストの点数を調査した研究結果について紹介する講師の小川和紀さん

 小川さんは、アメリカの企業「アップル」の創業者の1人、スティーブ・ジョブズ氏が自分の子どもにはiPadやiPhoneを使わせなかったことや、同社の最高経営責任者ティム・クック氏の「もしあなたが人の目よりもスマートフォンを見ている時間が長いなら、それは間違ったことだ」という言葉を伝え、「便利なデジタルデバイスをつくった人も、依存しやすいということを知っています。メディアバランスの取れた生活が大切です」と話した。

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メディアバランスの取れた生活について考える児童たち

 「ちょうどよいデジタル時間を自分と約束しましょう」という小川さんの呼びかけに応じ、児童たちはそれぞれ、自分にとって必要なデジタル時間を考えた。「勉強ができなくなるから30分」「勉強で動画を見ることもあるので2時間30分」「分からないことがあるとスマホで調べるので4時間」など、自分なりの理由を添えてデジタル時間を発表。小川さんは「どういう影響があるかを自分の頭で考えて決めることが大事。一般的には1時間を超えないで使うのがよいとされています」と締めくくった。

フェイクニュースは親切心でも広まる

 後半の「メディアリテラシー」のプログラムでは、フェイクニュースがなぜ広がるのかを考え、フェイクだと見抜くためのチェックポイントを学んだ。講師の同社代表取締役・小川圭美さん(42)は「インターネットは便利だけど、うそもたくさんある」と話し、「フェイクニュースが広がってしまう背景には、悪意ではなく、不安や怒りや親切心があることも多い」と伝えた。

2016年に熊本地震が発生した際にツイッター(現在のX)で「動物園からライオンが逃げた」といううその発信をした会社員が逮捕された例や2022年9月の大雨被害について「ドローンで撮影された静岡の水害」として虚偽の画像がXで拡散された例を挙げ、「広めた人は『大変だ!』『みんなに知らせなきゃ!』という気持ちだったかもしれないね」と解説した。

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SNSでフェイクニュースが拡散した事例について、小川圭美さんの解説を聞く児童たち

 続いて子どもたちは、4つのニュースの中からフェイクニュースを見つけ出す問題に挑戦。ニュースの発信された日付や発信者をチェックしたり、ニュースの中のキーワードをインターネットで検索したりして、内容が正しいかどうかを確かめた。

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グループごとに4つのニュースの正誤について話し合った

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自分で選んだニュースの情報について、インターネットを使って調べる児童

 見破るポイントとして、子どもからは「診断した医師の名前や解説をした専門家の名前が書かれていない記事はあやしい。もし名前を書いて、(読者が)調べても出てこなかったらうそだと分かってしまうから書けないんだと思う」という意見も出された。

 見事フェイクニュースを見破った紙屋朋城(ともき)さんは「普段は疑いながら読まないけれど、今日は見破ろうと思って読んでいたら、ありえないことが書かれているのに気付くことができた」、同じグループの大日向彩さんは「紙屋君に言われて『たしかに違う』と分かったけれど、うそがあると思って読まないと気付けないと思う」と話していた。

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「ニュースのタイトル」「ニュースを書いた人/発信日」「ニュースの本文」について、それぞれ本当かフェイクかの判断を書き込んだ

 4年生担任の鈴木快花(よしか)教諭は「ネットリテラシーについては、道徳や外部講師を招いての授業を通して繰り返し子どもたちに伝えている。学んでも学んでも、子どもたちを引っかけるわなはどんどん進化していく。何度もこうした話をすることで子どもたちに本当かうそかを見抜く力が付くと思うので、あらためてこうした学習は繰り返しが必要だと感じました」と話す。

 このプログラムを考案したイコールチャンス「TERAKOYA Program」のスタッフ堀麻耶さん(32)は「スマホをこれから持つようになる4年生に自分の頭でブレーキをかける力と、触れる情報を全部うのみにしない力を付けてもらうために考案した」とねらいを説明する。

 後半の講師を務めた小川圭美さんは「子どもたちは大事な部分をしっかりつかみ取ってくれた手応えがある。今回のデジタル・シチズンシップについての内容は、大人も実践できていないことが多い。デジタルデバイスとの付き合い方について、家庭で子どもから大人に『それはよくないんじゃないかな』とチェックが入ることがあってもいいと思う」と話した。

TERAKOYA Program(てらこやプログラム)

 教育事業を手がけるイコールチャンス社がキャリア教育プログラムとして展開。本年度は東京都中央区や高知県をはじめ、全国の小中学校、高校、大学でAIや金融教育についての41授業を行う。

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