子どものゲーム課金で高額請求、取り消しは可能? 23万円の返金を求めた事例から考える まずは188に電話を

 小中高校生がスマートフォンのオンラインゲームで課金を続け、高額請求されるケースが増えています。子どもにスマホを買い与えた後、利用状況を確認していない保護者も多いそうです。トラブルを防ぐため、何をすればよいのでしょうか。とある中学生の事例をもとに考えました。
写真 スマホでゲームをする子ども

スマホでゲームを楽しむ子ども

衝撃…いつもより7万円多いスマホ代

 「何でこんなに高いの?」。10月の秋晴れの日に登山を楽しんだ帰り。多摩地域在住の50代女性のA子さんはメールで届いたクレジットカードの請求書を開き、衝撃を受けました。いつもより7万円ほど多かったのです。最近、大きな買い物をした記憶はない。何かの間違いかと思ったら、そんなことはもちろんなく、中2の息子さんのスマートフォン代でした。理由はゲーム(アプリ内)課金です。楽しく、ほどよい疲れのあった旅の帰路、A子さんは息子とSNSでのやりとりに忙殺されました。

 息子さんはとある対戦ゲームに夢中でした。友達が課金でゲットしたキャラクターを自慢していて、自分もほしいと思い、課金の画面をタッチしました。息子さんのスマホは息子さんの顔認証で、A子さんのクレジットカードにひもづけられたスマホのキャリア決済(携帯電話代合算請求)ができる設定になっていました。

クレカは後払い 親はすぐに気付かず

 息子さんは最初こそ、A子さんが怒り出さないか、顔色をうかがっていたそうです。しかし、A子さんは、しばらく気付きません。クレジットカード払いは後払いのため、請求書が届くのは約1カ月後だからです。息子さんは「もしかしたら、お金がかからないのかな?」と自分に都合のよい解釈をして、それからも課金ボタンをタッチし続けました。人気のキャラクターをゲットできるチャンスかもという誘惑に勝てませんでした。

 A子さんが携帯電話会社に問い合わせたところ、総額は3カ月で約23万円に。7万円だったら勉強代としてあきらめようかと思っていたそうですが一転、ネットで相談窓口を検索。消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話し、地域の消費生活センターを案内されました。

 この件は、消費生活センターのベテラン相談員が担当になりました。民法では保護者の同意がない未成年者の契約は取り消すことが可能です。相談員が最初に行ったことは、息子さんと直接話して、契約した本人が18歳未満の未成年者として実在することの確認でした。大人が未成年者のふりをして返金を求める、なりすましによる不正があってはならないからです。このケースでは、相談員が本人確認するだけですみましたが、交渉相手となる会社によっては、親子関係を証明する住民票などの書類を求めるところもあるそうです。

返金請求は、うそ偽りなく事実を書く

 その上で、A子さんに

  1. 個別の課金が記されたゲームの利用明細
  2. 課金してしまった経緯をうそ偽りなく書き出し、本人と保護者(両親いれば2人とも)が署名した書類

を用意するよう助言しました。A子さんは書類をそろえて相談員に託しました。

 アプリストア(この場合はApple)への返金申請手続きは、相談員が担ってくれました。しかし、A子さんによると、Appleの回答は「返金しない」だったそうです。民法規定の何らかの例外事項に当たったと推察されます。記者も取材しましたが、回答は得られませんでした。A子さんは現在、ゲーム会社に直接、返金請求しようと書類を整えています。

平均33万円!相談は5年で倍増、100万円を超えることも… 原因は? 予防策は?

 国民生活センターによると、小中高校生のオンラインゲームに関する相談件数はここ5年で倍増し、2022年度は4000件を超えました。契約額の総額も約11億9000万円に上ります。うち約半分が小学生です。1人当たりの契約額も平均で約33万円(2022年度)で、かつ、100万円を超えるケースも少なくないそうです。

グラフ 小中高校生のオンラインゲームに関するトラブル 相談件数と契約総額

親の不注意 カード情報や暗証番号が…

 どのようなケースなら返金されるかについて、最も知りたいところですが、国民生活センターでは「企業側も誰のスマホなのか、どのような使われ方なのかなど、細かく見て判断している」と一概には言えないと説明します。返金された件数や金額などの統計も出していないとの回答でした。このように全国の消費生活センターに相談が寄せられるケースは「氷山の一角」(業界関係者)で、誰もが誤って課金してしまう恐れがあります。

 原因の一つは、保護者の不注意です。子どものスマホに残ったクレジットカード情報を消し忘れたり、子どもが保護者のキャリア決済などの暗証番号を知ったことに気づかず、無断で使用されたり。小学校低学年など、自分のスマホをまだ持っていないケースでは、保護者のスマホで遊んでいるうちに誤って課金決済をしてしまう事例も多いそうです。

「ペアレンタルコントロール」で制限を

 ではどうやって防いだらよいのでしょうか。

 まずスマホの使用時間や機能を制限する「ペアレンタルコントロール」を利用しましょう。2018年に施行された改正青少年インターネット環境整備法で、18歳未満の子どもが使用するタブレットやスマホには、接続先や時間などの制限をかけるフィルタリング機能を導入することが義務化されました。携帯電話各社は無料でサービスを提供しています。そのほか、端末でアプリ内課金などに対する制限の設定が可能なものもあります。

 ゲーム会社も対応に追われています。人気スマホゲーム「モンスターストライク」などを手掛ける「MIXI(ミクシィ)」社はアプリ内課金の際に年齢確認の画面を設けているものの、それだけでは防ぎきれないといいます。ペアレンタルコントロールの利用を重要視し、セミナーなどで訴えているそうです。詳しくは、同社の「20歳未満の高額課金問題への対策」を参照。

「後払い」への理解 ルール決めも大切

 また家庭内の取り組みとして、地域の消費生活センターでは、親子でお金が支払われる仕組みを学ぶことが必要だと強調します。支払いには事前、即時、事後とさまざまな手段がありますが、このうち、発覚が遅れがちなのは後払いになるクレジットカードを利用する場合です。保護者がすぐに気付かないからといって、お金がかかっていないということではない、と子どもに理解させる必要があります。

 そもそもスマホを渡す際に、ゲームの時間や課金のルールを話し合って決めることも大切です。例えば課金は何かのご褒美のときに、保護者が許可する1回限りとか。もちろん先にお伝えしたように、クレジットカード情報は削除するのを忘れずに。顔認証や指紋認証など、スマホの機能はどんどん便利になっています。子どもがどんな機能を利用しているか観察することは、トラブルを防ぐ第一歩となります。キャリア決済の利用明細をマメにチェックするのも防御策となります。

「悪いのは子どもではなく、大人です」 

 相談員は多額の支払いが発生してショックを受けている子どもたちには、「悪いのはあなたではない。あなたたちが仕組みを十分に学ぶ環境を整えていない大人です」と伝え、励ましています。同時に不注意であったのは間違いないことも指摘し、今後の糧にするよう伝えます。そして保護者は勉強代と思ってすぐに支払わず、子どもと一緒に返金請求をしたほうがよいそうです。

 相談員は「親子でお金について学び、ルールを決め、失敗したときは最後まで一緒に解決策を探る。何よりもの消費者教育になります」と指摘した上で、「通信サービスや決済システムが便利になる一方、仕組みが複雑になっており、理解しにくい状況です。トラブルを未然に回避する力を育む教育の必要を痛感しています」と話しています。

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  • tomi says:

    孫が15万ゲーム課金を行い、188への相談した結果、ゲーム会社と直接に話してくださいとの事でした。
    地域、担当で違うかもしれませんが、相談の意味が有りませんでした。

    tomi 男性 60代

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