出産した女性受刑者には「刑務所で子どもを育てる権利」があるのに…養育できたのは184人中3人だけだった

望月衣塑子 (2023年11月15日付 東京新聞朝刊)
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記者会見を開いたヒューマン・ライツ・ウオッチの笠井哲平さん(右)、高遠あゆ子弁護士(中)ら=14日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で

人権団体HRWの調査で判明

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)」は14日、日本で受刑中に出産した女性受刑者が、深刻な人権侵害を受けているなどとする調査報告書を公表した。東京都内で記者会見したHRWアジア局の笠井哲平さんは「収容中に出産したら育てる権利があるのに、多くの女性受刑者は知らない。きちんと権利を説明すべきだ」などと述べた。

所長の許可があれば、最大1年6カ月

 HRWは2017~2023年、刑期を終えた女性約60人や専門家らに聞き取りを実施。2011~2017年に出産した女性受刑者計184人のうち、3人しか養育に関われなかったことが分かったという。しかも3人が養育した期間はそれぞれ12日、10日、8日に限られていた。

 受刑者の処遇について定めた法律では、刑務所長の許可があれば出産後、最大で1年6カ月間、刑務所内で子を養育する権利があるとしている。

 HRWの笠井さんは「法律があるのに、事実上、活用できていない。赤ちゃんは生まれてすぐ親族や児童養護施設に渡されている」と指摘した。

生まれてすぐ親族や児童養護施設へ

 今回の調査で元受刑者らは、裁判官や弁護士からこうした権利の説明を受けたことはなく「刑務所の売店で赤ちゃん用品をみたことはあるが、育てているという話は聞いたことがない」と語っていたという。会見で高遠あゆ子弁護士は「そもそも受刑者への告知が義務付けられていない。告知をしないからといって違法ではないが、法改正も含め検討が必要だ」とした。 

 報告書では、2021年に女性受刑者が入所した理由として、窃盗は約5割、覚醒剤取締法違反が約3割と目立っていたと指摘。笠井さんは「薬物の単純所持や使用での服役者には、科料を適用し非犯罪化を導入するなど、収容の仕方を変える必要がある」と訴えた。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年11月15日

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