パパの育児参加は子どもの発達に好影響 同志社大の研究センター調査 発達が遅れるリスクが減少

藤原啓嗣 (2024年5月29日付 東京新聞朝刊)
 父親が育児に前向きだと、子どもの心身の発達が遅くなるリスクは小さくなる-。同志社大赤ちゃん学研究センター(京都府木津川市)がこんな調査結果を発表した。嘱託研究員として分析の中心となった加藤承彦さん(44)は「父親の育児参加は子どもの成長に良い影響を与える。支援の充実が必要だ」と訴える。「イクメン」として社風を変えた経営者の取り組みも取材した。

図解 父親の子育て参加がもたらす効果

3歳時点での発達状況に差

 加藤さんらのグループは、子どもの健康に好ましい環境要因を調べる環境省の全国10万人規模の調査「エコチル」のデータを活用。男性の育児参加と、子の発達との相関関係を探った。

 エコチルのデータのうち、第1子について、早産で生まれた子どもらを除いた2万8050世帯の親子を抽出。生後6カ月時点での父親の育児への関わり方と、3歳時点での子どもの心と体の発達状況の関係を調べた。

 その結果、食事やおむつ交換、遊びなどで、父親による子どもとの関わりが多いグループは、関与が少ないグループに比べ、最大で24%発達が遅れるリスクが小さかった。最も関連が強かったのは、走ったりジャンプしたりするような体を大きく使う運動の分野。手先の運動、日常の行動や集団生活に関しては13~16%発達が遅れるリスクが低かった。

母親の育児ストレス軽減も

 研究では、積極的な父親の関与によって、母親の育児ストレスが軽減されている可能性も指摘。家族関係が良好なことは、子どもの発達にも良い影響を与えると考えられるという。

 幼児教育に詳しい加藤さんは、2人の子育ての真っ最中。未就学の長男とは恐竜ごっこなどで遊んでいる。「妻と比べ、父親である自分とは体を大きく動かす遊びをすることが多く、身体的な発達に効いているのだろう」と推察する。

 厚生労働省の雇用均等基本調査によると、2022年に育児休業を取得した男性の割合は17%。その数字は年々上昇しているが、まだ低水準だ。所属する国立成育医療研究センター(東京)で加藤さんは、育児参加する父親のサポート体制について研究している。「父親の育児参加が社会的にも求められるようになったが、支援体制はまだ整っていない。父親の心と体のバランスを保てる環境が必要だ」と話している。

「社長が育休」で社風が変わった石井食品

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長女と一緒に出社していた当時の石井智康さん=石井食品提供

男性育休の取得率が100%に

 ミートボールなどで知られる石井食品(千葉県船橋市)社長の石井智康さん(42)は、長女(4)が生まれた年に育児休業を取った。その後、病気で妻が亡くなったが、周囲の協力も得て子育てと社長業にまい進する。石井さんは「経験を積むためにも育休期間は大事」と訴える。

 前職のIT業界では当然だったこともあり、石井さんは2019年11月に1カ月の育休を取得。食事作りや掃除、洗濯を引き受けた。社内の男性で育休を取得したのは2人目だった。

 育休中に育児に必要な家事を身に付け、子どもと向き合うことに慣れた。妻の体調が悪化して通院する必要があった時には長女と出社。今は保育園への迎えを近所の子育て仲間に手伝ってもらうなどして、1人での子育てと社長業とを両立している。

 この影響で、男性の執行役員2人も育休を取得。2022年度からは社内男性の育休取得率は100%だという。石井さんは育休を「育児修行」と呼び、「経験値を上げると思って頑張って」と送り出している。

 社を挙げて、毎年連続5日以上の有給休暇の取得にも取り組む。病気や事故、介護と、どの社員にも休まざるを得ない状況は起こりうる。このため、特定の個人に仕事や情報が偏ることを解消する狙いもある。石井さんは「休暇はみんなで考えるべきテーマ。仕事を離れて視野が広がると、仕事のパフォーマンス向上にもつながる」と信じる。

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  • 匿名 says:

    育休中もそうだけど、妊娠中から男の人が家事をできるようになっていた方がいいと思う。

    子どもが生まれてからだと家事や育児について話し合う時間を取りづらいというか取れない。兄弟がいたらなおさら。

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