〈坂本美雨さんの子育て日記〉64・娘にぶつける「早くして」が自分を追い詰める…そこで名案

(2022年10月28日付 東京新聞朝刊)
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引っ越し完了! ネコのサバ美姉さん、マネジャーの娘ツムギ姉さんと

坂本美雨さんの子育て日記

自分が一番よく聞いている

 朝、娘を学校に送り出し、ふーっとため息をつく。朝8時すぎ、すでに疲れていることに気づく。「早くして」と娘に言わない日はない。食べるのがとても遅い。靴下をはいていない。言わないとやってもらえない。しかし、自分が発する言葉は、自分が一番よく聞いている。以前も書いたかもしれないが、脳みそは、自分が発した言葉が誰に向けたものかは判別していないという説がある。

 つまり、人に向けた悪口も脳みそは自分宛てだと思ってしまったり、逆に人に対する褒め言葉も「あら、わたし?」と思っているそうなのだ。だから声に出して自分自身を褒めるのは恥ずかしくても、子どもにかわいいね、すてきだね、と言っていると、一石二鳥、我が脳も「へへ、ありがと♡」と思っている可能性がある。ちゃっかりしてて、かわいいじゃないか。

 だから、良い言葉ばかり発していたいなと、日々なるべく意識しているのだが、早くして、ばかりはどうにもならない。自分がいつも予定を詰め込んで焦ってばかりいるのは、娘にぶつけている無数の「早くして」が無意識に働いているのでは?とふと思った。

「これから?」は魔法の言葉

 そんな時、とあるラジオ番組で、子育てでやってよかったこと、というテーマで募集したメッセージの中に雲間から光が差し込むような名案があった。それは、「これから?」という魔法の言葉だ。例えば、「歯磨きしたのー?」と聞くと暗に「まだなの?」というニュアンスがついてくる。

 「歯磨きはこれから?」と聞くとあら不思議、前向きな感じがする。子どもも罪悪感なく素直に「これから!」と言えるし、もう済んでいる場合でも、くどく言われたという印象ではなく、もうやったぜ!と得意な気持ちになれる。本当にちょっとした言葉のニュアンスなのに、人の気持ちって大きく左右されるものだ。毎日、これから?に置き換えていきたいと思う。リスナーさん、本当にありがとうございます!

 さて、ライブとライブの間の2日間に引っ越しをねじこんで、なんとか無事に大量の荷物は運び終えた。合間合間で片付けていこ…と思っていたら、あっという間に1カ月以上たっていた。まだ私たちは山積みの荷物に囲まれて暮らしているし、寒くなってきたのに着たいカーディガンが見つからない。ねえ美雨、段ボールを開けるのは、これから?(ミュージシャン)

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