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子どもに株式投資を教える必要あるの? 村上世彰さんインタビュー

岸本拓也、宮崎厚志  
 リスクを伴う株式投資をあえて子どもに伝える狙いはどこにあるのでしょうか。子どもに資金を与えて取り組みを進める村上世彰さんに聞いてみました。

―投資体験の取り組みを始めたきっかけを教えてください。

 「2017年に『生涯投資家』という本を出して、いろんな人から反響がありました。子ども向けにも何か出してほしいという要望もあって、昨年、『いま君に伝えたいお金の話』を出版したんです。実際に経験を積んでもらうのもいいんじゃないかと考え、今回のプロジェクトにつながりました」

―手応えはどうですか。

 「(3月末時点で)申し込みは3000件くらい。まあこんな程度かな。申し込みがあって、口座を開き、お金が振り込まれるまでタイムラグがある。そこも問題なので、改善しないといけない。今年でだいたい1万件くらいできれば御の字と思ってます」

―参加者は損するリスクはありません。もっと増えてもと思いませんか。

 「そんなことは絶対にないと思う。きっと、『村上からお金を巻き上げるのは怖いぞ』って思っている大人は多いし。子どもたちは僕のことを知らないし、怖いとは思っていないけど」

―投資体験で子どもたちに期待することは。

 「大損した人に期待しています。『なんで損したんだろう』って考えてほしいから。損なんてなかなかできない経験ですよ。でも、損をかぶるのは僕だけですから、子どもたちには思い切ってやってほしい。株式投資を通じて、新聞なんかを読んでいろいろ調べるようになるわけです。それによって、世の中のことを学んでいくのが一番いいことなんじゃないかな。今回の取り組みが広がったら、最後に僕は破綻しますよ。でも、全財産を使い切るくらいの気持ちでやってます」

―プロジェクトの成果を感じてますか。

 「ないです。5年、10年で結果は出ないですよ。投資体験を通じて、お金のことをちょっとでも理解してほしい。みんなの意識が変わって、お金がぐるぐる回る一助になれば、僕はうれしい」

―「お金を回すことが経済や社会を成長させる」というのが持論ですね。

 「もちろん。お金をためるのはいいが、ため込むのは悪いことです。というのも、お金は道具だから。道具は使わないとさびる。遊びだけじゃなくて、社会貢献とか、企業なら設備投資といった、いろんな形で使うことが大事。お金を稼ぐことも全然悪いことじゃない。お金がぐるぐる回らないと経済の血は回らない」

―投資家がお金を出すからには「リターン」を期待します。このプロジェクトのリターンとは何ですか?

 「このプロジェクトだけじゃなくて、社会貢献って、なかなかお金にならないじゃないですか。じゃあ、その成果は何か。自分ですよ。自分が一番幸せになれるかどうか。『寄付して良かった』って言えるかどうかですよ」

―いろいろな社会貢献活動に関わっていますね。

 「結構やってます。『売名行為だ』と言われて本当に悲しい思いもしましたけど。東日本大震災の時は、10億円くらい集めて、いろんな物資を届けたりもしました。いっぱいありがとうって言っていただいた。僕がこの国に一番お役に立てるのは何かを改めて考え直した時に、やっぱり『お金』かなって。お金って何だろうって教えることが自分に向いていると思うようになった」

―社会貢献活動を始めたのは、事件がきっかけですか?

 「事件で時間ができて暇になったからね。実は、社会貢献のことを教えてもらったのは家内からなんです。(事件の後)家内からは『パパが稼いでも、家族の生活が変わるわけじゃないし、何もいいことない』と言われました。家内は敬虔(けいけん)なクリスチャンで、たぶん稼ぐことに罪悪感があるんじゃないかな。社会貢献活動を始めたのは、家内の影響が8割ですね」

―著書では『お金は人のために使うことが一番幸せだ』と書いています。

 「それが一番心が温まることが多いんじゃないかな。それだけです。もし心が温まらなかったら、やめればいいんですよ。私は寄付にも結果を求めます。NPOだって、受け取った寄付がどれだけ人を幸せにしたか、その結果を寄付者に伝えて、喜んでもらうことをやらないといけない。結果を伴わない寄付をやり続けるのはダメだと思っている。そんなことを言っていたら、ある雑誌に『物言う寄付者』って書かれたんだ(笑)」

―村上さんは小学3年生のときに、大学生までのお小遣いを一括で100万円受け取り、株式投資で何倍にも増やした逸話が有名です。自分の子育てにも生かされたんでしょうか。

 「子どもたちにも僕と同じように(投資体験を)やらせました。うまくいった子も、失敗した子もいる。ただ、一生懸命考えてくれたと思う。僕自身は小さいころから百貨店に行くのが好きで、この商品はなんで高いんだろう、安いんだろうって考えて、数字の感覚を強くしました」

―今はシンガポールに拠点を移しています

 「(事件後に)逃げたんですよ。日本という国が怖くて。人に声をかけられるのも本当にしんどいし。シンガポールだと基本的に考える時間があってエネルギーがたまります。いまは、東南アジアの不動産の投資したりしています」

村上世彰(むらかみ・よしあき)

 1959年、大阪府生まれ。東大を卒業後、83年に通産省(現経済産業省)入省。99年に独立し、村上ファンドを設立した。現在は、シンガポールを拠点に個人投資家として活動している。近著に「いま君に伝えたいお金の話」(幻冬舎)。