「悩み相談して」の呼びかけなのに… まず「ルール守れ」 東京都教委のメッセージに疑問の声

(2019年5月9日付 東京新聞朝刊)
 東京都教育委員会は4月、生徒に悩み相談事業を周知したいとして、公立の小中学校と高校に都教委のメッセージを張り出すよう通知した。ところが、文面は「学校の集団生活における決まりや社会のルールを守ることが大切です」が先に記され、相談の連絡先は最後に小さくあるだけ。内容や構成に教員らから疑問の声も出ている。
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都教委が出した生徒向けのメッセージ

「不安や不満、怒りと上手に付き合うことも重要」

 都教委が新年度にメッセージを出すのは初めて。内容は、充実した学校生活を送るには友人や先生と心を通わせ、良好な人間関係を築くとともに、決まりやルールを守ることが大切だと説明している。

 困ったことが起きたら不安や不満、怒りの感情と上手に付き合うことも重要だと指摘。自分で解決できない時は大人や都の相談機関、都が始めた無料通信アプリ「LINE」での悩み相談もあると記した。相談の連絡先は「参考」として最下段に小さく載せた。

 教員向けのメッセージもあり、生徒との良好な人間関係が重要とした上で、決まりやルールを守る意味を「丁寧かつ継続的に指導していくことが必要」とした。体罰を許さない風土なども求めたが、悩み相談事業の周知には触れていない。

都教育長「ルール順守の内容は、学校生活に必要」

 中井敬三教育長は取材に「4月は学級や学年、学校が変わり不安になる子どもが多く自殺も増える時期。抱え込まないで相談してほしいと呼び掛けた」と趣旨を説明。

 ルール順守の内容は「学校生活をきちんと送る上で必要」とし、感情との付き合い方に触れたのは「一定程度、自律的にコントロールしなければならない年代だ」とした。

 生徒向けは校内への掲示を求め、教員向けは都立学校の全教員に送付し、区市町村教委にも全教員に配布するよう通知した。

教諭や識者が違和感を指摘「管理する側の都合では」

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相談ほっとLINE@東京の画面

 「いすに座っていられない子がいたら、理由を聞いて一緒に考えてあげたい。それが教育だと思う」

 町田市立中学校の女性教諭は、ルール順守メッセージへの違和感をこう語る。学校にはさまざまな事情のある子がいる。「『ルールを守れ』が最初にあると、学校が決めた枠組みに入れないことで、『自分はダメだ』と感じる子が出るのでは」と危惧する。

 都教委は相談事業の周知が狙いと説明するが、品川区立中1年の女子生徒は「メッセージは校内に張ってあるかもしれないけど知らない。配られたとしても捨てちゃったかも」。2年の男子生徒も知らなかった。

 教育評論家の親野智可等(おやのちから)さんは「このメッセージでは伝わらない。前置きなく『ここに連絡を』としないと、子どもは文章が長いと読まない。受け手の立場に立たなきゃ」と話す。

 少年事件を多く担当する太田伊早子弁護士は「『ルール守れ』は生徒に寄り添ったアドバイスというより管理する側の都合では」と指摘する。

都の窓口「相談ほっとLINE@東京」

 都が始めた「相談ほっとLINE@東京」は都内の中学、高校生を対象に毎日午後5時~9時半、都教育相談センターはフリーダイヤル=(0120)538288=で24時間、それぞれ相談を受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年5月9日

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