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愛知県の小中学校の「トーチ」で大やけど 10年で事故300件 賛否両論「楽しい思い出」「危険な行事」

(2019年9月27日付 東京新聞朝刊)
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火の付いた棒を回す演舞「トーチトワリング」を披露する子どもたち(春日井市立南城中提供)

 愛知県内の主に小中学校の野外活動などで長年行われている「トーチトワリング」(トーチ)が、注目を浴びている。火を付けた棒を扱う全国でも珍しい演舞で、「達成感」や「感動」を得るなどの目的で続けられてきたが、名古屋市で7月に中学生が大やけどを負ったことをきっかけに存廃をめぐる議論が勃発。災害共済で医療費が給付されたケースは10年間で約300件に上るなど事故は常態化しており、安全管理のあり方が問われている。

棒の先のタオルに灯油つけて着火 回しながら演舞

 「すごく楽しかったし、とてもいい思い出になりました」「こんな危険な行事を小中学生にやらすとは」

 ツイッターで「トーチトワリング」と検索すると、無数の投稿が続く。

 トーチは小中高生がキャンプファイアなどの際に披露。「火の舞」とも呼ばれ、長さ50~60センチほどの棒の先に巻いたタオルに灯油を染み込ませて着火し、回すなどして演舞する。名古屋市を中心に、県内の多くの学校で伝統的に行われている。

夏休みの練習中、中2男子の服に引火…右腕大やけど

 事故は夏休み中の7月下旬、同市守山東中学校の運動場で発生。2年生の25人がトーチに火を付けて振り回す練習をしていたところ、男子生徒1人の服に引火し、右腕に約20センチの大やけどを負った。

 同市教育委員会はトーチの指導マニュアルを作成しており、着火前に灯油を絞りきることや衣服の素材の確認、燃え移ったときは至急水をかけて消すことなどを明記。だが、同校ではペットボトルの灯油を振りかけて生徒に渡すなど、十分に守られていなかった。

名古屋市教委のマニュアル「感動・連帯感・達成感」

 このため同市教委は火を使ったトーチの演舞を本年度は行わないよう、市立の小中高校に通知。来年度以降の対応を検討している。

 そもそも、トーチはなぜ行われているのか。同市教委によると、詳しい由来は不明だが、マニュアルには「見る者に感動を与えることができる」「演技まで一緒に頑張った仲間との連帯感や最後までやり遂げた達成感を味わえる」などと効果を列挙。名古屋造形大特任教授の大橋基博さん(66)=教育行政学=によると、約40年前に同市内の学童保育の指導者らがキャンプで披露したのを機に、県内に広まったらしい。

「安全が最優先。リスクも考えなければ…」と校長

 一方、事故は少なくない。同市教委によると、昨年も小学生が大やけどを負うなど、毎年10件ほどの事故が発生。同県安城市でも今年、児童2人がやけどを負った。

 学校などでの事故の災害共済をしている日本スポーツ振興センター(東京)の統計によると、「トーチ」「火の舞」によるけがへの医療費給付は毎年20~40件近くあり、2008~17年度の10年間で計304件に上る。多くが愛知県内とみられる。

 同県春日井市の南城中は今年の名古屋での事故を受け、是非を検討。2年生約30人が6月から練習し、夏休みも15日特訓したといい「努力を無にしたくない」(堤泰喜校長)と安全対策を徹底し、保護者の同意書を取り実施した。これまで同校で事故はないが、堤校長は「安全が最優先。リスクも考えなくては」として来年度については「熟慮し、判断したい」と話す。

火を使わないケミカルライトに切り替える学校も

 そんな中、安全対策として火を使わないケミカルライトを取り付けたトーチに切り替える動きも。同県知立市の猿渡(さわたり)小は昨年まで灯油を使っていたが、今年はライト式を使用。三浦啓作校長は「灯油を使わないので教員の心理的負担も減らせる。ライトはきれいで、子どもも達成感を味わっていた」と話す。名古屋市でも、8月上旬までにトーチを実施した小学校約70校の8割がライト式だった。

 学校での事故に詳しい名古屋大の内田良准教授は「感動を呼ぶ学校の伝統行事の中には、子どもを多大なリスクにさらし、それを乗り越えることによって成り立っているものが少なくない。伝統や教育の名のもとにリスクが見えなくなりがちだ」と指摘。「安全対策でリスクをどこまで減らせるのか、また、教育効果はリスクに見合ったものなのかをしっかり見直す必要がある」と話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年9月27日