学校給食がパンと牛乳、デザートだけ!? カロリーは摂取基準値以下、栄養も偏り コロナ対応、自治体で差 「大事な一食と認識を」

畑間香織 (2020年8月17日付 東京新聞夕刊)
 「小学3年生の長男の給食が、糖質と炭水化物に偏っている」。千葉県佐倉市の看護師小川奈々さん(38)から、そんな声が寄せられた。新型コロナウイルスの影響による休校中の遅れを取り戻そうと奮闘する教職員や児童生徒にとって給食は大事な栄養源。取材すると、自治体ごとに栄養量やバランスにばらつきがあることが分かった。 
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従来の給食に戻すよう千葉県佐倉市教育委員会に働き掛けた小川奈々さん(左)と春和希さん=千葉県佐倉市で

感染防止で皿数、メニューが減り…

 新型コロナ禍の学校給食を巡っては、多くの自治体が、感染防止のため皿数を減らして配膳の手間を省いて提供するなど工夫を重ねるが、一部ではメニューを減らす学校も出ている。

 小川さんの長男が通う市立小学校は6月15日に給食を再開した。同30日までの献立は連日、パンと牛乳のほかはゼリーやヨーグルト、バナナなどのデザート1品と、タンパク質が少ない。6月のエネルギーの平均は500キロカロリーと学校給食法で定める児童(小学3、4年生)1人あたりの学校給食摂取基準値の650キロカロリーを下回っていた。

 小川さんは「給食で栄養を取る子もいる。食で免疫機能を高めることも大事なのに、何のための給食なのか」と憤る。友人で食育講師の春和希(はるわ・のぞみ)さん(32)=佐倉市=と一緒に、SNSを通じて全国の小学校の6月の献立表を集めた。県内や東京都、北海道などから寄せられた献立表を見比べ、同市の給食は栄養が偏っているとの思いを強めた。

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保護者から「少ない」「粗末だ」の意見

 2人は任意団体「佐倉市学校給食を考える会」をFacebook上に立ち上げ、7月8日に佐倉市の西田三十五(さんご)市長と茅野達也教育長宛てに要望書を提出。栄養価を満たす通常給食の再開を9月から8月に前倒しすることなどを求めた。

 市教委指導課によると、保護者から「量が少ない」「粗末だ」など否定的な意見が電話とメールで寄せられたことなどを踏まえ、7月から調理を伴った献立を1品増やした。小川さんの長男が通う小学校ではビビンバやハンバーグ、豚丼などパン以外の献立が増えた。市の担当者は「給食で栄養のすべてが取れるのではない。朝と夜に家庭で栄養を補ってもらうようお願いしている」と話す。

練馬、渋谷、横浜は当初から摂取エネルギー満たすメニュー

 他の自治体ではどうか。東京都練馬区や渋谷区、横浜市などでは給食再開当初から、カレーや丼といった配膳をしやすいメニューだが、学校給食法が定める児童1人当たりの摂取エネルギーを満たすようにしている。

 7月から同様の対応を取る新宿区の担当者は「給食で栄養を取る子どももおり、早く通常の給食を食べさせたかった」と話す。一方、品川区や杉並区などは佐倉市と同様に、通常給食に戻す時期を9月や夏休み明けの8月下旬とする。

 元文科省学校給食調査官で女子栄養大の金田雅代名誉教授(学校給食)は「安全で、安心できる給食を出すのが大前提なので、自治体で対応にばらつきがあるのは理解できる。ただ、成長期の子どもにとって家庭で不足しがちな栄養素を補う大事な1食としての役割を十分に認識し、従来の給食に1日も早く戻してほしい」と話している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年8月17日

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