ネットいじめを考えるマンガ教材 SNSの行き違いがきっかけで… 「正解」より「自分ならどうするか」

小嶋麻友美 (2021年5月30日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
マンガ教材の一部

マンガ教材の女子版の1ページ

 インターネット上でのいじめについて考える中高生向けのマンガ教材を、関東学院大の折田明子准教授(情報社会学)らが制作した。いじめはちょっとした行き違いから起きるもの。ネット空間で「やっていいこと」「悪いこと」の知識を学ぶのではなく、自分ならどうするかを考え、他者と話し合うことに重点を置いている。

マンガ教材の一部

マンガ教材の一部

女子版の続き

絶対的に悪い人はいなくても、結果的に仲間外れ

 教材は男子中心と、女子中心の2種類。女子生徒バージョンは吹奏楽部が舞台で、主人公は部活に遅れがちな友人と、責任感の強い部長との間で板挟みになる。遅刻は家庭の事情であることを知っているが「個人情報だから」と主人公は話せず、部長は他の部員たちとSNSで相談。結果的に仲間外れの形になった友人は、部活に姿を見せなくなり―という設定だ。

 男子バージョンも、SNSでのささいなやりとりが、思いもよらない事態に発展する。どの登場人物も絶対的に悪いわけではなく、それぞれ心の動きがこまやかに描かれ「読む人によって状況の見方や気づくことが異なり、それを自分の言葉で説明することで他人との違いがあぶり出せる」と折田さん。読んだ上で、誰に共感したか、主人公はどう行動すべきだったかなどを話し合ってもらうことを想定している。

マンガ教材の一部

マンガ教材の一部

マンガ教材の男子版の一部

ただ配って読ませるだけでは子どもには響かない

 文部科学省の2019年度の調査では、パソコンや携帯電話での誹謗(ひぼう)中傷、嫌がらせの件数は過去最多の1万7924件。特に中学生は2011年度の5倍。「ネットいじめ」対策は急務だが、従来の文科省などの教材は正解や失敗例を説くものが多い。

 折田さんは「ただ配って読ませるだけでは子どもには響かない」と指摘。「教材を使った議論で、教員など大人も子どもたちのリアルなネット利用の日常を知ることができる」と話す。

 科学技術振興機構・社会技術研究開発センターのプロジェクトの一つ。マンガ教材については、メール netriskedu@gmail.com で希望者の問い合わせを受け付けている。

「ネットは危険」強調する指導はもう限界 広がるデジタル・シチズンシップ教育

 国が進める「GIGAスクール構想」の一環で小中学生1人1人にタブレット端末の配備が始まり、学校でのデジタル活用が進む中、ITを積極的な社会参加の道具と捉え、よき使い手を目指す「デジタル・シチズンシップ教育」の考えが日本でも広がり始めた。

 「日本はこれまで、ネットがいかに危ないかを強調し、後ろ向きで抑制的な使い方ばかり教えてきた。GIGAスクールを進める上で、もう持たなくなっている」。坂本旬・法政大教授(情報学)は説明する。

 IT利用を巡る教育はこれまで、ネットいじめなどの「負の部分」に着目して危険性を説く「情報モラル教育」が主流だった。デジタル・シチズンシップ教育は、デジタルを創造的、批判的に活用する能力を子どもたち自身が考え、実践しながら身に付けてもらうのが狙いだ。2010年代半ば以降、欧米で本格的に広がり、経済協力開発機構(OECD)なども重要な施策として提言している。

 実践する自治体も増えてきた。大阪府吹田市は昨年、ICT教育の全体構想にデジタル・シチズンシップ教育の推進を盛り込んだ。米国の動画教材を翻訳し、国内での普及に取り組む国際大学GLOCOMの豊福晋平准教授と今度(いまど)珠美客員研究員らの講義と模擬授業を経て、本年度は市内全域で授業を展開する予定。市教育センターの福井将人所長代理は「デジタルの世界を公共の場と捉えて、情報社会のよき担い手となるためのスキルや知識を身に付け、行動できる子どもを育てたい」と語る。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年5月29日

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