デジタル教科書は「記憶に残りにくく、学習にマイナス」 脳科学研究者が指摘

東松充憲 (2021年5月15日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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デジタル教科書の問題点が解説された酒井教授の講演=東京・永田町で

 デジタル教科書の導入が本格検討される中、紙で読む教育の大切さを訴える「活字の学びを考える懇談会」主催の講演会が2日、東京・永田町で開かれた。脳科学を研究する酒井邦嘉・東京大大学院教授が「デジタル化された教科書の内容は記憶に非常に残りにくく、学習にとっては相当なマイナスだ」と指摘した。

「考える前にすぐ検索」を学習だと勘違い 

 大学の教壇に立つ酒井教授は「現場で痛感している」とこんな体験を明かした。

 「簡単にネット検索などができると、確かに便利だが、考える前に調べてしまう。これは大学生たちをみていると本当に、何か少し私が話をしただけでスマホで検索が始まっているんです。自分で考えて咀嚼(そしゃく)する前に調べてしまう。考えようとしない。考えるのはバカバカしい。書いてあるモノを探してくればいいんだと。それが学習なんだと勘違いしている」

 要領のいい学生ほど検索に飛びつき、考えようとしないという。その結果、限られた少ない情報の中で論理を組み立てたり取捨選択したりする過程が省かれてしまう。

記憶に大切な「空間的な手がかり」がない

 学びがタブレットやスマホの端末で完結しがちで「紙のノートは使わなくなる。メモを取れない学生が増える」とも。酒井教授は「大学の講義を聴くのに大学ノートを持ってこない」と嘆いた。

 デジタル化しても教科書の内容は紙の教科書と同じではないかとの意見には、酒井教授は次のように反論する。

 「内容の把握(の仕方)が変わる。デジタル教科書の場合、画面上の位置が定まらない。スクロールすると位置が変わってしまう。電源を切って画面を閉じれば実体がなくなってしまう。記憶するには空間的な手がかりが非常に大切だが、何ページのどこに書き込んだとか、あそこで先生がこう言ったのをこうメモしたなとかの手がかりが、デジタルではほとんどない」

人間はムダな情報から知識を確立していく

 人間の脳について「非常に原始的に、記憶するときにはたくさんのムダな情報を取り込むことで自分で関連づけをして、自分なりの知識を確立していく。その過程は時間がかかる」のだという。

 こうした問題意識から酒井教授は「アナログとデジタルのバランスを取りたいという議論が多いが、あえてアンバランスを取らなければいけないと私は考えます。紙の教科書やノートが主であって、あくまでもデジタルは従。そうしないと教育そのものの質が低下していく」と話した。 

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年6月15日

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コメント

  • 匿名 より:

    ネット上の検索は、辞書とは全く違うものです。例えば数学の複雑な計算だってそれなりのサイトなりアプリなりを使えば一発だし、国語の読解だって、有名な文章であれば多くの人がネット上で解説しています。辞書や書籍はそれを利用して考えるのに対し、ネット上の検索は解答を直接得ることが可能なんです。

    私がよくわからないのは、デジタル教科書は教科書をデジタル化したもののことでは?それと検索になんの関係があるのか。
    すぐネット上で検索するのは反対ですが、ノートや教科書を電子化するのは賛成です。紙より効果的に使えますし、何より紙って意外と重いしかさばる。
    電子教科書だって書き込みはできますし、位置が定まらないの意味がわからない笑 p20をめくればp21が出てくるのは電子教科書だって同じで、教科書を開いたときに目に入ってくる情報も全く同じ。
    紙をそのまま電子化しているのに、寄り道がなくなるはずがないのでは?電子辞書は紙の辞書をそのまま電子化したものではなく、少し話が違うかと。今ある電子教科書は、表示する場所が紙からスクリーンになっただけ、というものばかりです。
    酒井教授がこの結論に至ったデータが知りたいです。この記事だけだと感覚で話してるようにしか思えません。

  • 匿名 より:

    たしかに、無駄な情報から知識がつみあがりますよね。辞書を調べるとき、目的にたどりつくまで時間かかる。目に止まったなにげない内容に興味がでて調べる連鎖がおこる。要は寄り道。

    デジタル化の今、記憶に残らないか残るかはわからない。検索が一発でできるのは便利だが、寄り道がへってると思う。

    寄り道が新発見をもたらし、知識と興味の幅をひろげる。

  • 匿名 より:

    ほんとうにそのとおりです。デジタルの時代しか知らない人間には分からないでしょうね。両方知ってる私には確かにその通りだなあ、と分かります。

  • 匿名 より:

    私はデジタル教科書賛成派です。

    わからないことがあるとすぐに検索するというが、何がいけないのか?昔もわからないことは辞書や書籍で調べたと思います。今はネットで検索できるようになっただけで、検索時間が大幅に短縮されただけです。もちろんネットの情報源によっては、信憑性の問題があるサイトもあるかもしれませんが、それは書籍等にも同じことが言えると思います。

    スマホやタブレッドではメモを取らないというがこれは大きな間違い。
    今では高性能なタッチペンが売られており、紙に書くのと同じぐらいの感覚でタブレッドにメモを取ることが可能です。ペンによっては筆圧で色の濃淡が再現できたり、書き入れるペン先の角度によっても線の濃さや太さが変化します。今ではそのぐらい高性能なペンが普通に手に届く値段で販売されています。
    また、電子上の教科書やノートにメモした内容はそのページごと画像やPDFで保存できるますし、タグ付けやタイトルも編集もできますので逆に整理しやすいのでは?と思います。
    つまり、これは環境やツールの問題というより技術発展に馴染めるかどうかの問題ではないでしょうか?

  • 匿名 より:

    テストの時に、教科書のあの辺りに書いてあった、とか右上の絵だな、とかページ上の位置情報から思い出そうと頑張ったのを思い出しました。
    記憶の手掛かりになるんですよね。
    デジタル教科書から紙に戻した国もあります。他国での実証の結果も利用して一番こどもたちのためになる選択をして欲しいです。
    デジタル教材の良さもあるので併用が理想なのかなと思います。

  • 匿名 より:

    本当にそう思います。
    小学生の子供たちが、学校で支給されたタブレットを持って帰ってきてますが、まずは手で宿題をしなさいと言ってもなかなかやろうとしません。
    そこにタブレットがあったらすぐに触りたくなります。
    一年生も言葉を探すときに、検索しようとします。
    見ている時は止められますが、見ていないときに触ろうとします。

    セキュリティとか充電とかの問題があるとは思いますが、家に持って帰る必要は全くないと思います。

  • 匿名 より:

    仰る通りです。

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