息子よ、今はまだ弱虫なままでいい〈古泉智浩さんの子育て日記〉25

(2021年7月30日付 東京新聞朝刊)

古泉智浩さんの子育て日記

写真

草むらでバッタを探すうーちゃん(右)とぽんこちゃん

家族には威張る、内弁慶

 小学校1年の養子のうーちゃんは3歳の里子のぽんこちゃんに対して、ひどく意地悪で、威張り散らしています。妹だけでなく、おばあちゃんにもママにも僕にも、ちょっと言い間違いがあると「バカなの?」と言います。バッタを捕まえただけで「こんなにバッタ捕まえられる子いる?」と自慢します。その一方で、英語教室の宿題ができずに泣きます。どちらにしても器の小ささが気になります。こんなことで学校生活は大丈夫なのでしょうか。

 そんな折、学校で懇談会があったので、恐る恐る先生に聞いてみました。「威張ったり意地悪をしてみんなに嫌われていませんか?」。すると先生は「え?」という顔をして、全くそんな様子はないどころか、教室でおしゃべりするのは1人の男の子だけ。2人でひそひそ話してはクスクス笑っているというのです。他の子には心を閉ざし、課題で隣の女の子と共同作業をする時も返事すらしないそう。学校は心を解放できる場所ではないようです。

 内弁慶なのは、学校の反動でしょうか。先生に話を聞いてから、家でひどい態度を取ってもあまりとがめないことにしました。家でも居場所をなくしたらかわいそうです。

いじめられる? 心配だけど

 うーちゃんにはひどく臆病な面があり、最近ではプールが怖かったようで、学校でのプールの様子を聞いても何も教えてくれません。しつこく聞いたらやっと「水が冷たかった」とだけ教えてくれました。ここ数日30度を超える猛暑で、海に行って水遊びをしようと誘うのですが、プールが怖かったせいか、かたくなに拒まれます。

 そんな弱虫だと、いじめられちゃうんじゃないかと心配になります。ちょっとでも強くなってほしいと空手道場に誘っても、そもそも空手自体を怖がります。もしいじめっ子に乱暴されたとしても、自分を守れるという自信を持たせてあげたい。父親としてはついそう思ってしまいますが、体力面でちょっと強くなることで、威張りんぼの側面が現れて、自分より腕力が弱い子に意地悪をしてしまうのも親としては嫌だなと思います。

 ミュージシャンの小山田圭吾さんが過去のいじめについて語った記事が問題となりました。いじめられる方はその場で傷つきますが、いじめた方もそのことを背負うことになる。いじめる側になったら最悪です。今はまだ、弱虫で臆病のままでいいかなという気持ちになっています。 (漫画家)

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