いじめ防止法「知らない」子が9割 制定から9年、埼玉のNPOが小中高生3万人に調査

(2022年4月24日付 東京新聞朝刊)

円グラフ アンケート 「いじめ防止対策推進法」を知っていますか

 いじめ対策の基本を定める「いじめ防止対策推進法」を「知っている」と答えた小中高生は約1割ー。いじめ問題に取り組む埼玉県のNPO法人が全国約3万人の小中高校生を対象に実施したアンケートで、こんな結果が出た。同法が制定されて約9年たつが、深刻ないじめは後を絶たない。原因の一つとして、NPOは同法が知られていないことを挙げ「認知率を上げる取り組みが早急に必要」と指摘する。

いじめ防止対策推進法とは

 大津市での中学生いじめ自殺事件(2011年)をきっかけに2013年6月に制定され、同9月に施行。いじめを「一定の人間関係がある児童生徒の行為で、対象者が心身の苦痛を感じているもの」と定義し、いじめが疑われる自殺や長期欠席などを「重大事態」と位置付けた。学校には文部科学省や自治体への報告が義務付けられ、速やかに事実関係を調べ、被害者側に適切な情報提供をするよう定めている。

法にのっとった対応がされないケースも

 アンケートしたのは、「プロテクトチルドレン」(埼玉県川口市)。年間1000件を超えるいじめ相談に対応している代表の森田志歩さんが、これまでつながりを持った全国の教育委員会と小中高校に依頼し、1~2月に実施。約3万人が答え、そのうち有効回答数は約2万6600人(内訳は小学生約9100人、中学生約1万1500人、高校生約6000人)だった。

 いじめ防止法を「知っている」と答えたのは8.9%。「知らない」は64.3%、「内容がわからない」は25.7%だった。「知っている」との回答は、小中高別で見ても大きな差はなく、1割前後だった。

 自由記述では「子どもたちのいじめの法律なのに教えてもらえない」「みんなが分かるようにしてほしい」(小学生)、「聞いたことはあるけど何も分からない」(中学生)、「このアンケートで知った」(高校生)などの声が上がった。

 同法は、いじめの定義や学校や教委の責務などを明記し、いじめが起きたら事実確認して子どもや保護者を支援し、重大なケースでは調査を行うーとする。しかし、森田さんが相談を受ける学校現場では、子どもがいじめを訴えても法にのっとった対応がされていないことが珍しくない。子どもに加え、保護者も法を知らないため、不適切な状態に置かれていてもどうにもできず、追い詰められているという。

 「子どものためにつくられた法律が、子どもとつながっていない。きちんと教え、守られる権利や主張する権利があると伝えれば、子どもが主体的に法律を使えるようになる」と森田さんは話す。

円グラフ アンケート 子どものための法律やこども家庭庁がつくられることについて

こども家庭庁に「子どもの意見反映を」

 また、アンケートでは、政府が来年4月の発足を目指す子ども政策の司令塔「こども家庭庁」や子どもに関わる法律や政策の決め方についても質問。「子どもの意見も聞いてほしい」と「大人と子どもが一緒に話し合ってつくりたい」が合わせて8割超に上った。自由記述でも「子どもたちのためにつくるなら意見を聞いてほしい」(中学生)などの回答があった。

 森田さんは「こども家庭庁の議論に子どもを参加させるべきだ。当事者に意見を聞かなければニーズと違うものになり、がっかりさせる結果になる。相談してくる子どもたちの共通した願いは、すぐに助けてもらうこと。大人の考えや都合だけでは実現できない」と訴えている。

フィルタリングで相談窓口につながらず 「SNS以外も用意必要」

 アンケートでは、いじめ相談についても聞いた。利用しやすい窓口としては、対面より、会わずに相談できる交流サイト(SNS)などが好まれたが、スマートフォンやパソコンに設定されたフィルタリング機能によって、アクセスできないケースがあることが分かった。

メールや電話など複数の手段の用意を

 フィルタリングは、長時間の使用や有害サイトなどにつながるのを防ぐため、接続先や時間の制限をかける仕組み。未成年が使うスマホを販売する店側に設定が義務付けられている。

 ITジャーナリストで成蹊大客員教授の高橋暁子さんによると、店頭で勧められたフィルタリングをそのまま設定した場合、ネット接続に必要な標準ブラウザーが使えず、読み取ったQRコードをウェブ上で開けなくなることがあるという。

 高橋さんは「保護者は子どもの成長段階やニーズに合ったフィルタリングを選ぶことが大切」と強調。相談窓口側についても「SNSが一番アクセスされやすいのは確かだが、接続できない子どもがいることも考慮し、メールや電話など手段を複数用意する工夫が必要だ」と指摘する。

棒グラフ アンケート いじめを相談することについて

 アンケートではこのほか「相談」のイメージを複数回答可で聞いた。全体では「相談した後が心配」が55.4%、「いじめをやめさせてくれると思う」が36.7%などとなった。年代別では、小学生では半数近くが「いじめをやめさせてくれる」と前向きにとらえていたが、中高生では「相談後が心配」が6割超だった。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年4月24日

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  • のん says:

    小学生低学年のうちの子はやり返さないのでクラス他害のある子にほとんど毎日何度も殴られ 授業中に机や椅子をカッターで切られ唾を塗りつけるなどされた。もう1人他害のある子は無差別で突進体当たり子供が骨折中に何度もされ 1ヶ月で治るはずが3ヶ月近くかかった。親は全く出てこない。

    授業中もふたりは大騒ぎ。先生もうるさいですよと言ったことがある。学校にも苦情が殺到してるって先生が… 何度も先生に訴え、教育委員会などにも行った。やっぱり加害者が守られてるのかな、、、と思うことが…普通に過ごす加害者、別の教室 家で過ごす被害者 友達に会いたいのに..

    学年が上がって別のクラスになれると思ったら殴ってた子と一緒。うちの子はPTSDになって学校に行くのも不安なのに

    明日も学校には行かないよ。いつまでうちの子耐えさせるの❓❓ 警察には謝ってくれたら良いと言ったけど 苦しすぎてやっぱり無理。ずーっと謝罪を求めても出てこなかった親達。無理😣

    のん 女性
  • obeymell says:

    対策法を調べやすくていいと思いました

    obeymell 男性 10代
  • k.Murata(元高校教諭) says:

     学校現場で、いちばん多いのは、どんな「いじめ」か、知っていますか。それは(人格的に未熟な)教員による(児童生徒への)「いじめ」です。

     「いじめ防止対策推進法」は、原案では「何人もいじめはしてはならない」となっていたのが、その後、同法の「いじめ」は児童生徒間のものだけと(こっそりと、水面下で)“修正”されてしまいました。それを知って、わたしは、さすが官僚の目の付け所はちがうと嘆息しました。

     そのおかげで、今も、現場では「教員によるいじめ」は横行しています、ただ…それが「不適切な指導」という具合に、「あくまでも指導だった」ということで、コトバのあやで隠されてしまうのです。

     「いじめ防止対策推進法」という法律があることを知っても、あまり意味は無いのであって、その成立過程で、「教員が、いじめの加害者と認定されないように」、条文が修正されていまの法律が出来上がっている、教員からの「いじめ」に、子どもたちは声を上げてもよい…ということを、子どもたちに教える必要があると思います。

    k.Murata(元高校教諭) 男性 40代
  • mister Z says:

    「いじめ防止対策推進法」はおろか、法で定められ、各学校に必ずある「学校いじめ防止基本方針」の存在すら、児童・生徒は知らないのではないでしょうか。学校管理職、教師、児童・生徒、保護者等、また教育委員会の担当者も交え、年一回でも方針の見直し及び改定に向けての議論が行われれば、いじめは、少なくとも減るのではないでしょうか。また授業の一貫として、「いじめ防止対策推進法」に触れてみるのも、効果的ではないでしょうか。64%が知らないとは、非常に興味深い数字で、危機感を感じます。方針を広く周知していくことが、大切だと考えます。すばらしい記事でした。

    mister Z 男性 50代
  • 匿名 says:

    子どものニーズに合わせ柔軟な対策を
     ひとり1人の気持ちに寄り添えるように。よく話し合いをして欲しい。

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