子どもの高血圧に注意 中高生500人超の調査で1割弱 専門家「健診で測らない現状を変えるべき」
小中高生の基準は大人より5~10低い
血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が、血管の壁を押す圧力のこと。日本高血圧学会によると診察室で測定した場合、最高血圧が140以上か、最低血圧が90以上、もしくは両方が当てはまる場合に診断される。小中高生の基準は、これより5~10低い。
国立大学保健管理施設協議会がまとめた「学生の健康白書2021」によると、大学1年に相当する18歳男性の約9%が高血圧。年齢が上がるごとに割合は上昇している。一方、中高生は学校の健康診断で血圧を測らないため、これまで実態は分かっていなかった。
肥満と関係 野菜不足、運動不足…
そこで現状を把握しようと、同学会理事長で、佐賀大医学部教授の野出孝一さん(63)が調査を開始。昨年6月、私立の中高一貫校である弘学館中高(佐賀市)の協力を得て、血圧に関する出前授業と測定を実施した。
その結果、中学生265人のうち23人(8.7%)、高校生307人のうち19人(6.2%)が高血圧と判明。野出さんは「想像以上に多かった」と明かす。今回のデータからは、肥満と関係しているケースが多かったといい、「原因としてはカロリー過多や野菜不足、炭水化物が多めの食事、運動不足が考えられる」と指摘する。
子どものために家族ぐるみで対策を
こうした結果を踏まえ、佐賀県では、本年度から若者の高血圧の実態を把握する取り組みを県全体に広げる。県内の希望する約30の高校に自動血圧計を配布。保健室に置き、測定の機会を設けてもらうことになった。また、6月から、県立高約10校で弘学館中高と同じように出前授業と血圧測定をすることが決まった。
高血圧には、血圧が上がりやすいという遺伝的要因と、食を含めた生活習慣などの環境要因があるとされる。そのため、子どもの高血圧を防ぐには、家族ぐるみでの対策が有効だ。「子どもだけでなく、他の家族も高血圧である可能性はある。子どもや孫のためなら、食事を減塩にするという親や祖父母は多く、生活習慣を改めるきっかけになる」と野出さんは言う。
特定原因がある「二次性」は要注意
注意したいのは、「二次性高血圧」。体質や遺伝、環境、加齢によって発症する「本態性高血圧」に対して、ある特定の原因がある高血圧のことを指す。例えば、腎臓の病気からくる腎性高血圧、ホルモンの異常で起こる内分泌性高血圧などがある。国内の高血圧患者の10~20%を占めるとされ、適切な治療が必要だが、小児の実態は分かっておらず、調査も進んでいない状態。「小児にも一定数いるはずで、実態の把握が必要だ」と語る。
野出さんによると、学会でも若年者を対象にした研究グループを立ち上げ、子どもの高血圧をどう管理するか、指針を策定中。国際高血圧学会でも同様の動きがあり、国際的にも関心が高いという。
「そもそも子どもが血圧測定をしたことがないという現状を変えていくことから始める必要がある」と野出さん。米国では3歳からの測定を推奨。「佐賀をモデルに、全国に取り組みを広げていきたい」と力を込める。
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