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学習障害の子に「こんな配慮を」 読み書き困難の子を持つ母 事例集作ります

中沢佳子 (2018年11月24日付 東京新聞朝刊)
 知的な遅れはない。でも、教科書の文章を音読できない、黒板の文字を書き写せないなど、読み書きや計算といった特定の分野に困難がある学習障害(LD)の子は、40人学級で1~2人いるという。周囲が少し配慮すれば問題なく学べるが、保護者が学校に配慮を求めても「前例がない」と及び腰になることも多い。そんな中、LDの子の母親が配慮の事例集づくりに立ち上がった。
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「『配慮』は人生に対する支援」と語る菊田史子さん

「そういうお子さんが来る学校じゃない」受験への配慮断られ

 「うちはそういうお子さんが来る学校じゃない、と断られたこともあった」。東京都新宿区の菊田史子さん(48)は、読み書きに困難を抱える長男有祐(ゆうすけ)さん(16)の受験で、必要な配慮を高校に求めた時を振り返る。

 有祐さんは小学校に入学したころから、読み書きが難しい状態だった。国連本部の仕組みを口で説明して大人を驚かせても、自分の名前が書けない。算数の計算はできるが、ノートに答えを書けない。宿題や持ち物を連絡帳に書くのも一苦労。医師らの助言でLDと分かり、タブレット端末やパソコン、プリンターなどの使用を始めた。すると問題なく学習でき、有祐さんに理系分野の高い学力があることも分かった。学校と交渉や説得を重ねてLDの実態を理解してもらい、授業や試験で機器の持ち込みを認めてもらった。

小論文にワープロなど必要な配慮を12月中にネットで紹介

 試験の成績では難関校も狙える。ただ、たくさんの文字を答案用紙に手で書くのは厳しく、特に小論文がネックだった。中学2年生のうちから都内や近隣県の高校を回って事情を説明し、受験では小論文にワープロを使うなど必要な配慮をお願いした。だが返ってくるのは「特別扱いできない」「他の高校で前例はありますか?」と拒否や戸惑い。認める高校は3年生の夏になっても見つからなかった。有祐さん自身も「僕は読み書きに困難はあるが、違う方法をとることでみんなと同じスタートラインに立てる」というA4判一枚の文書をパソコンで書き、粘り強く交渉。時間延長などを認めた私立2校のうち、慶応義塾高校に合格した。ただ、史子さんは釈然としない。「書きたくても手で書けない子が、ワープロ使用を認めてもらうのもこんなに苦労するなんて」。少なくとも、子どもや保護者が必死に頭を下げて回る現状はおかしいと考えた。

 多くの学校で「前例はありますか」と問われた経験から、「前例はどこかに必ずあり、知りたい保護者も多いはず」と考えた史子さん。ならば配慮や対応の事例を集め、インターネットで紹介しようと思い付いた。今年7月、発達障害がある子の保護者などと一般社団法人「読み書き配慮」を設立し、今月22日からネットで事例を募り始めた。12月中にデータベースとして使えるようにする。

4割以上の子が必要な支援受けられず 「配慮は人生への支援です」

 公的機関に事例集はないのか。独立行政法人の国立特別支援教育総合研究所にデータベースがあるが、内容が教員向けの指導例に偏っている。史子さんは「もっと実用的で、保護者が共有できる情報でないと」と語る。

 文部科学省によると、2012年に公立小中学生約5万人を抽出した調査で、注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害のある子は通常の学級に6.5%いると推定され、うち学習に困難のある子は4.5%と判明。だが、41.7%が必要な支援を受けていなかった。

 史子さんの知る限りでも、LDの子が通常の学級で学ぶのを諦めるなど、人生の選択肢を狭められたケースが多い。史子さんは訴える。「『配慮』を特別扱いやズルだと言う人もいる。でも、LDの子はみんなが当たり前にできることができない。それを補う道具や配慮は、文字を書くのに鉛筆を使うのと同じ。その子の人生に対する支援でもあるんです」