カラーコンタクトで目のトラブル、若者に増加 眼科受診しないネット通販が一因 角膜が傷つき失明することも

(2021年10月12日付 東京新聞朝刊)
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アカントアメーバ角膜炎。抗菌薬が効きにくく失明することも(水谷眼科診療所提供)

 黒目を大きく見せたり、色を変えたりすることができるカラーコンタクトレンズ(カラコン)。若い女性を中心に人気があるが、目のトラブルを訴える例が後を絶たない。眼科を受診せずにインターネットなどで購入する人が多いためで、悪化すれば視力の低下や失明の恐れもある。

使用期限超え・ケア不足が障害の原因に

 「カラコンに限らず、コンタクトレンズは、目にとって異物」と水谷眼科診療所(名古屋市中村区)院長で、眼科専門医の水谷聡さん(67)は言う。「1日使い捨てや2週間交換といった指定の期限を超えて使ったり、レンズのケアが不十分だったりすると、障害の原因になる」と断じる。

 診療所でカラコンのトラブルが増え始めたのは、ネット通販が定着したここ10年ほどで、月に数人が訪れる。2月に充血や視力低下で受診した女性(22)は、黒目を覆う角膜の上皮が点状にはがれる角膜びらんと診断。完治まで1カ月かかった。レンズのケア不足が原因とみられる。

 水谷さんが忘れられないのは、15年ほど前に診た当時16歳の女性だ。女性はネットで買ったカラコンを、左目に痛みが出た後も使い続け、抗菌薬が効きにくいアカントアメーバ角膜炎を発症した。専用の洗浄液でなく、水道水でレンズを洗浄、保存していたとみられ、水の中のアカントアメーバが目の中で増殖。失明は逃れたが、左目は眼鏡などで矯正しても視力が出なくなった。

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巨大乳頭結膜炎。上まぶたの裏に大きなブツブツがある(水谷眼科診療所提供)

 他に多いのは、角膜が傷ついて異物感や疼痛(とうつう)、かすみなどが出る点状表層角膜炎、アレルギー反応を起こしてまぶたの裏の結膜にブツブツができる巨大乳頭結膜炎など。これらはカラコンの使用をやめ、点眼をすれば治るが、角膜の傷から感染症を起こす角膜潰瘍になると深刻だ。時には失明することもあり、治っても黒目の一部が白く濁る。

15~29歳の15%が眼科を受診せず使用

 コンタクトレンズは眼科で診察を受け、目に異常がないかなどを確認してから買うのが望ましい。角膜のカーブや視力に合ったレンズを処方してもらえるだけでなく、他人と貸し借りしないなど基本的な使い方や洗浄方法なども教わることができる。自己流の洗浄は汚れが十分に落ちにくい。

 しかし、日本コンタクトレンズ協会が2019年、15~29歳の女性600人に聞いたところ、一度も眼科を受診せずにカラコンを使っている人は15%。視力矯正を目的とする通常のコンタクトレンズ使用者の2%を大きく上回る。おしゃれ感覚で、ネットやドラッグストアなどで買う人が多いためで、値段も1箱10枚入りで1000円前後だ。

 その手軽さから使用は10代にも広がる。日本眼科医会が2018年、全国の中高生に調査すると、カラコンを使ったことがある中学生は14.3%、高校生18.2%と、データとして最も古い9年前の約6倍だ。うち、目の不調で使用をやめた人は中高生とも1割に上る。

色素がにじんで黒目に触れる粗悪品も…

 水谷さんによると、カラコンは通常、素材と素材の間に色素を挟み込んで1枚のレンズに仕上げる。しかし、中には、使ううちに摩擦で色素が表面ににじみ出て、黒目に触れてしまう粗悪品もある。

 日本眼科医会常任理事の加藤圭一さん(58)は「症状が出ても、いったん使うのをやめて治まれば大丈夫と軽く考える若者が多い」と嘆く。日本眼科医会は、カラコンなどコンタクトレンズの正しい使い方を伝える若者向けの動画をネットで公開するなど啓発に力を入れる。

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