子どもの視力低下、ストレスのせいかも 目に異常のない心因性視覚障害 新学期「SOS見逃さないで」

(2021年9月7日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

図解 心因性視覚障害の特徴

 目に問題はないのに、突然、子どもの視力が落ちることがある。家庭や学校でのストレスなどが原因で「心因性視覚障害」と呼ばれ、小学生の女児に多い。新学期が始まったばかりのこの時期、ただでさえ子どもの心は疲れやすい。しかも新型コロナウイルスの感染収束が見通せない中での学校再開だ。専門家は、子どもの発するSOSを見逃さないよう呼び掛ける。

一番前の席なのに黒板の字が見えない…寂しさから?

 名古屋市内の会社員女性(41)は7月、眼科で小学2年の次女(8つ)の視力検査の結果を聞いて驚いた。左目が0.06、右目は0.09という。眼鏡なしでは外を歩けないレベルだ。受診のきっかけは、担任教師からの電話。「一番前の席なのに、黒板の字が見えていないようだ」と言われた。

 健康診断などで異常を指摘されたことはない。自宅では3メートルほど離れた場所からテレビを見ている。検査後、医師にそう伝えると、国家資格を持つ視能訓練士が、次女に度が入っていない眼鏡をかけさせた。

 「これでよく見えるよ」と再び検査をしたところ、今度は両目とも1.0。医師によると、次女はうそをついたわけではなく、一時的に視力が低下する心因性視覚障害という。何らかのストレスが原因とみられ、月1回の受診で様子を見ることに。医師からは、親子の触れ合いを大切にし、次女に不安を感じさせないよう助言された。女性は「仕事が忙しく、寂しい思いをさせたかも」と話し、今は寝る前などにぎゅっと抱き締めるようにしている。

半年~1年半で自然治癒 発達障害などとの関連も

 神奈川県立こども医療センターの眼科医、大野智子さんによると、同センターでは月に1~2人が心因性視覚障害と診断される。8~12歳に多く、男児より女児に起こりやすい。両目に起きることが多く、検査をすると視力低下のほか、色が見分けにくい、視野が狭くなるなどの結果が出ることも。心の不調が目の症状に表れるとされるが仕組みは分かっていない。

 心因性視覚障害を疑うのは、レンズで矯正しても視力が上がらない、角膜や網膜などを調べても目の機能に異常がない場合。診断には、同じ度数の凹レンズと凸レンズを1枚ずつ入れ、実際には裸眼と同じ状態にして視力を測る「レンズ打ち消し法」などを使う。これで視力が改善すれば、疑いが強まる。視能訓練士が声を掛けながら検査をすると、見える場合が多いという。

 一般的な治療法はなく、大抵は半年~1年半ほどで自然に治る。大野さんらは2000~13年、疑いがあって同センターを受診した5~15歳の157人のうち、心因性視覚障害と診断された116人の経過を調査。93%を占める108人の視力は、1年2カ月後までに1.0に回復した。一方で、発達障害などとの関連がうかがわれるデータも。精神科を受診した45人のうち、11人が発達障害や情緒障害と診断された。

子どもが見えにくそうにしていたら、眼科の受診を

 ストレスの原因は、勉強やクラス替え、塾の負担、友人関係、両親の不仲・離婚、きょうだいより注目を浴びたいなどさまざまだ。友だちや家族の眼鏡を見て「自分も掛けたい」という願望が症状につながる例も。その場合は、度の入っていない偽眼鏡が効果を発揮することがある。

 大事なのは、子どもが伸び伸びと過ごせるよう心掛け、見えているかどうかを気にするそぶりを見せないことだ。大野さんは、若い世代の新型コロナ感染が増える中で新学期を迎えた今年は、特に子どものストレスに注意が必要と指摘。「学校で視力低下を指摘されたり、見えにくそうにしていたりしたら、眼科を受診して」と話す。

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